【秋の季語】小鳥来る

【秋の季語=晩秋(10月)】小鳥来る

【ミニ解説】

「渡り鳥」というとツバメやオオハクチョウが有名だが、秋になると、小鳥も日本に渡って来る。鶸・連雀・尉鶲・花鶏など。

これに対応する春の季語としては「小鳥帰る」「小鳥引く」があるが、それほど用いられることは多くない。

歳時記によっては、山地から人里に降りてくる小鳥たちのこともこのように呼ぶとする、ものもある。

いずれにしても、「ささやかな幸せ」を詠んだ句が多い。または、日常が「小鳥来る」ことによって、特別感をもって見えてくる、など。


【小鳥来る(上五)】
小鳥来る音うれしさよ板庇 蕪村
小鳥来る空たのもしくみ上げけり 久保田万太郎
小鳥来る薄き机をひからせて 飯島晴子
小鳥来る朝が逆さに匙の中 有馬朗人
小鳥来る頃のひびきを長良川 長谷川櫂
小鳥来るわが住む三鷹市下連雀 片山由美子
小鳥来る母となりたる子の窓辺 宮坂恵子
小鳥来る運勢欄を見てをれば 西村智恵子
小鳥来るかごめかごめの後ろより 末次朗
小鳥来る窓に青空ゆきわたり 黛まどか
小鳥来るマクドナルドの朝早き 小川軽舟
小鳥来るはじめて話すことばかり 明隅礼子
小鳥来るまひるを眠らないやうに 山岸由佳
小鳥来る三億年の地層かな 山口優夢
小鳥来る次にからすがやつて来る 山口優夢

【小鳥来る(中七)】
裏庭を愛する小鳥来たりけり 西村和子
薔薇園に小鳥来る日の海の紺 原田青児
聖フランチェスコの小鳥来りけり 小島明

【小鳥来る(下五)】
ありがたき空気や水や小鳥来る 三橋敏雄
気ままなる妻との暮し小鳥来る 深見けん二
白髪の乾く早さよ小鳥来る 飯島晴子
仏吐く空也上人小鳥来る 村上栄子
空がまだ濁らぬ時刻小鳥くる 大庭三千枝
みすゞの里童話のやうに小鳥来る 渡辺花穂
幼な子の願ひつつまし小鳥来る 千葉皓史
サフランの香るパエリア小鳥来る 塚本一夫
落ちてゐる金の釦や小鳥来る 藺草慶子 
いい手紙ふつうの手紙小鳥来る 加藤かな文
間取図のコピーのコピー小鳥来る 岡田由季
とびつきり静かな朝や小鳥来る 西村麒麟
横顔を描かれてゐたり小鳥来る 斉藤志歩


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