【冬の季語】兎狩

【冬の季語=初冬〜晩冬(11〜2月)】兎狩

【ミニ解説】

かわいらしい「ウサギ」は飼育の対象となる一方で、野山を駆け回る「野ウサギ」は、狩猟の対象となり、人間の食料ともなってきた。日本でウサギの狩猟・捕獲が行われていたのは、1万年以上前の縄文時代に遡る。

「兎狩」に関する資料は多くないが、江戸時代に徳川将軍家では、正月にウサギの羹を食べる慣習があったという。また同家によって行われた小金原御鹿狩においてもウサギが狩られた記録があり、徳川家斉による寛政7年(1795年)の狩りでは9頭(シカ:95頭)、徳川家慶による嘉永2年(1849年)の狩りでは166頭(シカ:19頭)が捕獲されたと伝えられている。

明治期に入ると、ウサギの毛皮が(大陸への進軍を図ろうとする)陸軍における防寒着の材料として用いられたため、「兎狩」に対する需要が高まった。とりわけ、1937年に日中戦争が本格化すると、農林省の鳥獣調査室(現在の森林研究・整備機構の一部)と猟友会の協力によって「兎狩」が積極的に推進され、買い上げが行われた。

戦後になっても「兎狩」は続いているが、1967年をピークに減少を続けている。ウサギの猟は個人単独によるものが多く、積雪期に行われることが多いとされている。

「兎罠」もまた冬の季語。「兎狩る」と動詞形で用いられることもある。


【兎狩(上五)】
兎狩すみたる牧の扉を閉めて 佐藤念腹
兎狩隣の国も山ばかり 大峯あきら
兎狩古き海老刺網張りて 茨木和生
兎狩などと一笑されにけり 茨木和生

【兎狩(中七)】
城内に兎狩する枯野かな 野村泊月

【兎狩(下五)】
しぐるゝや笹原もどる兎狩 寺田寅彦
渤海に傾ける野の兎狩り 石田波郷


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