【冬の季語】忘年会

【冬の季語=仲冬(12月)】忘年会

【ミニ解説】

年末に催される宴会のこと。

新暦の「お正月」に重きをおく現代の日本において、宗教的意味付けや特定行事様式のない風習の一種である。カラオケは、年末料金となる。

社会学者の園田英弘(1947~2007)は、このような組織的に大人数で「年忘れ」を行う忘年会のことを「近代忘年会」と名付け、その起源を明治中期と分析している。

曰く当時は、身分制が解体されて社会が流動化したことで、情報交換によるビジネスチャンスを狙った「社交」が求められた時代。旧大名は、文明開化に後れを取るまいと社交や接待の場を増やした。一方で、庶民たちも自分が属する集団(会社など)内部の人脈を広げ、外部の人脈を開拓しようとしていった。『吾輩は猫である』(1905年)には、注釈もなく「忘年会」という言葉が出てくるから、明治末年には定着していたと思われる。


【忘年会(上五)】
忘年会一番といふ靴の札 皆川盤水
忘年会みんなで逃がす青い鳥 塩見恵介

【忘年会(中七)】
遅参なき忘年会の始まれり 前田普羅
スクランブル交叉忘年会はおもしろし 山口青邨
立つてゐる人が忘年会幹事 千原草之
月まぶし忘年会を脱れ出て 相馬遷子
酔はさんと忘年会のはかりごと 鈴木洋々子
略図よく書けて忘年会だより 能村登四郎
雀見て忘年会へ急ぐかな 岸本尚毅

【忘年会(下五)】
くじ引きの座に上下なし忘年会 山本千代
八畳はこんなに坐れる忘年会 池田澄子


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