【冬の季語】返り花(帰り花)

【冬の季語=初冬(11月)】返り花(帰り花

「返り花」とは、躑躅や山吹などの返り咲きを指す場合もありますが、基本的には桜の二度咲きのこと。「返り花」の名句といえば、やはり

人の世に花を絶やさず返り花 鷹羽狩行

でしょうか。うまいことをいう。


【返り花(上五)】
返り花旧き良き代をさながらに 富安風生
返り花薄氷のいろになりきりぬ 飛鳥田孋無公
返り花咲けば小さな山のこゑ 飯田龍太
返り花書屋をのぞく童あり  山口青邨
返り花蝶蜂を呼ぶ賢治の碑 津田清子
返り花三年教へし書にはさむ 中村草田男
帰り花むかしのゆめの寂かなる  円地文子
帰り花顔冷ゆるまでおもひごと  岸田稚魚
返り花妖しき園となりにけり 吉屋信子
返り花別るるために来しごとし 小林康治
返り花きらりと人を引きとどめ 皆吉爽雨
帰り花鶴折るうちに折り殺す 赤尾兜子
帰り花枝に遠慮をしてをりぬ 後藤比奈夫
返り花まへにうしろに摺り仏 宇佐美魚目
帰り花のまつくらやみに潦 田中裕明
返り花一閃の紅とどめたる 石嶌岳
返り花咲いて山廬の門がまへ 新保笑子
帰り花ひそと久女の墓小さし 稲畑廣太郎
返り花空の波動のとどきたる 夏井いつき
返り花ひとりになればまたひとつ 中岡毅雄
帰り花あああ愛しているんだぜ 芳野ヒロユキ
返り花盲導犬は犬を見ず 津川絵理子
返り花新体操の濃き化粧 小野あらた
帰り花ここにも平和通かな 山澤香奈

返り花(中七)】
その下へきて返り花見失ふ 前田攝子

返り花(下五)】
寄進にも名連ねし縁や返り花 大須賀乙字
日に消えて又現れぬ帰り花 高濱虚子
ひとり磨く靴のくもりや返り花 芥川龍之介
薄日とは美しきもの帰り花  後藤夜半
一陣の温き風あり返り花 小松月尚
もろもろにまさりて白く返り花 中村汀女
仰ぎたるところにありし返り花 清崎敏郎
仮の世のかりそめならぬ返り花 青柳志解樹
指させば失せてしまひし返り花 鷹羽狩行
人の世に花を絶やさず返り花 鷹羽狩行
にこやかにぼけの来し父返り花 茨木和生
人ごゑの遠のきゆくや返り花  角川春樹
言ひ遺したきことあるや返り花 宮谷昌代
三つといふほど良き間合帰り花  杉阪大和
ここよりは獣道とや帰り花  稲畑廣太郎
成り行きに任す暮しの返り花  鯨井孝一
太陽のとほれる道に返り花 長谷川櫂
寂庵の仏に捧ぐ返り花 髙田正子
言ひ訳のごとくぽつりと返り花 片山由美子
蜂の来て知る楠の帰り花 依光陽子


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

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