サマーセーター前後不明を着こなしぬ 宇多喜代子【季語=サマーセーター(夏)】


サマーセーター前後不明を着こなしぬ

宇多喜代子


サマーセーターは素っ気ない。

とくに丸首の、ゆったりした素材のセーターならば、よくよく見て着たのに、前後が逆だったりすることがあるだろう。

まあ実際には、着てみて前後逆であることがわかれば、ぐるりと回して正しい方向で着るのだろうけれど着てみて、やっぱり確信がもてないというのも何だかおかしいし、それでいて内心まあいいやと思っている、そんな女性の心持ちにも憧れてしまう。

「着こなしぬ」と文語調で収めたことよって、ますます馬鹿馬鹿しく感じられるのも、ちょっとしたポイント。

こういう一句と出会うと、自分も「サマーセーター」を季語として使ってみたくなってしまう。角川「俳句」2020年8月号より。(堀切克洋)



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