かんぱちも乗せて離島の連絡船 西池みどり【季語=かんぱち(夏)】


かんぱちも乗せて離島の連絡船

西池みどり

島へ向かう一日数本の連絡船には、人以外の物資も載せられる。生活必需品にお酒やおもちゃ、誰かからの手紙だって運ばれることだろう。港で水揚げされたばかりの魚たちも、期せずして再び海上を旅するのである。

カンパチは夏の季語。程よく乗った脂とコリコリした食感が魅力の魚である。僕が昔住んでいた宮崎では「ニリ」と呼ばれていた。ブリやヒラマサと比べると淡白ながらもしっかりとブリ属特有のうまみがあり、刺身にすると抜群だ。

スーパーで見かけるのはほとんどが養殖ものだが、季語としてのカンパチはもちろん天然もののことである。天然の方がやや脂が少なく、よりシャキッとした食感が楽しめる。

五月五日はこどもの日。本当はこどもの日を詠んだ句を紹介したかったが、いい例句があまりにも見つけられなかった。孫がどうだ、大人がどうだ、老人がどうだ…どうしようもない句のオンパレードに困り果てていたところ、ある居酒屋から一件のメールが届いた。

「五月五日はこどもの日❗️鯉のぼりにちなんで、ご来店のお客様全員にカンパチのカマ焼きをサービス🐟」

とのことである。全然鯉のぼりにちなめてはいないが、祝日のあしらい方としてかなり粋だなと感心した。あいにくその酒場には行けないけど、今日は僕もどこかでカンパチを食べようと思った。

細村星一郎


【執筆者プロフィール】
細村星一郎(ほそむら・せいいちろう)
2000年生。第16回鬼貫青春俳句大賞。Webサイト「巨大」管理人。


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