大牧広(1931-2019)最後の句集となった『朝の森』の表題句である。朝の森は静かで、ほの暗く、人気がない。昼にもなれば照りつけるような太陽の光は、森の「遠く」を取り囲んでいる。作者は、森のなかを歩いていると同時に、その外から迫りくる「夏」までも見ている。『朝の森』(2018年)より。(堀切克洋)
【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】
抱きしめてもらへぬ春の魚では …
古池やにとんだ蛙で蜘蛛るTEL…
土のこと水のこと聞き苗を買ふ …
浜風のほどよき強さ白子干す 橋…
春の夢魚からもらふ首飾り 井上…
飛んでゐる蝶にいつより蜂の影 …