川を見るバナナの皮は手より落ち 高濱虚子【季語=バナナ(夏)】


川を見るバナナの皮は手より落ち

高濱虚子


初出は、1935年でこれにより「バナナ」が夏の季題となった。とてつもなく有名な句だが案外、この句の「川」と「皮」が同音意義語であることに触れた鑑賞というのは、少ない気がする。当たり前すぎるからかもしれないが、まったくの偶然ということはないだろう。さて、「皮」には「身=バナナ」という対応物があるが、「川」はいかに。川の「身」とは滔々と流れてゆく水である。もちろん、その水のことを「川」と呼ぶのだけど、時間に沿って生々流転するのは、「川/皮」ではなく、その「身=バナナ/水」のほう。そんなふうに、バナナの「皮」ひとつから、川の川性について考えてしまう、哲学的(?)な句でもある、なんちゃって。(堀切克洋)



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