【連載】歳時記のトリセツ(4)/中西亮太さん


【連載】
歳時記のトリセツ(4)/中西亮太さん


今年2022年、圧倒的な季語数・例句数を誇る俳句歳時記の最高峰『新版 角川俳句大歳時記』が15年ぶりの大改訂! そんなわけで、このコーナーでは、現役ベテラン俳人のみなさんに、ふだん歳時記をどんなふうに使っているかを、おうかがいしちゃます。歳時記を使うときの心がけ、注意点、あるいは歳時記に対する注文や提言などなど……前回の鈴木牛後さんからのリレーで、第4回は「円座」「秋草」の中西亮太さんです!

【ここまでのリレー】村上鞆彦さん橋本善夫さん鈴木牛後さん→中西亮太さん


――初めて買った歳時記(季寄せ)は何ですか。いつ、どこで買いましたか。

俳句を始めた当初、何かを買った記憶はあるのですが、はっきり覚えていません…。ただ、『角川季寄せ』(KADOKAWA、2014年)が出た時に、当時所属していた結社の先生にいただいて、しばらく愛用していました。

『角川俳句大歳時記』の全季語を増補・改訂。季語数最多の約18500季語収録。

――現在、メインで使っている歳時記は何ですか。

虚子編『新歳時記 増訂版』(三省堂、1951年)『合本俳句歳時記 第五版』(KADOKAWA、2019年)『角川俳句大歳時記』(KADOKAWA、2022年)です。

――歳時記はどのように使い分けていますか。

『新歳時記』は句会で使っています。お題が載っていないこともたまにあるのですが…。

『合本俳句歳時記』は電子書籍(Kindle)で使っていて、電車の中とか、歩いている時とか、スマートフォンでいつでも見られるようにしています。

時間に余裕があったり、季語に興味を持ったりした時は、『角川俳句大歳時記』などの大歳時記系で調べるようにしています。

――句会の現場では、どのように歳時記を使いますか。なるべく具体的に教えてください。

席題を調べるのに『新歳時記』使います。知っていても知らなくても基本的には解説を読み、例句を見るようにしています。

自分が題を出すことがあれば、この歳時記から当月の季語を選んでいます。

――どの歳時記にも載っていないけれど、ぜひこの句は収録してほしいという句があれば、教えてください。大昔の句でも最近の句でも結構です。

月白や手足こまかき湖のえび 宇佐美魚目

なんとなく、「月」は掲載倍率が高そうなイメージですが…。

――自分だけの歳時記の楽しみ方やこだわりがあれば、教えていただけますか。

自分だけではないと思いますが、『新歳時記』の虚子節の解説を楽しんでいます。

――自分が感じている歳時記への疑問や問題点があれば、教えてください。

一般的な季節感と歳時記(あるいは二十四節気)のズレでしょうか。「二月」が春、「八月」が秋というのにいまだに慣れません。寒いし、暑いので。ただ「疑問」や「問題点」というよりは、「ズレてるなぁ」という程度の気持ちです。

中西さん所蔵の歳時記(ご本人提供)

――歳時記に載っていない新しい季語は、どのような基準で容認されていますか。ご自分で積極的に作られることはありますか。

一句を読むときに「新しい季語」が季語っぽく機能していれば、気にせず読み進めています。歳時記に載っている/載っていないというよりは、季語としての機能性を気にしているのかもしれません。

自分では新しい季語に挑戦したことはないので、いつか発明してみたいです。

――そろそろ季語として歳時記に収録されてもよいと思っている季語があれば、理由とともに教えてください。

ソース不足で恐縮なのですが、何かの雑誌のバックナンバーを読んでいた時に、「芥饐え」という言葉が季語(?)として提案されていました。夏場のごみ収集車の「あの臭い」を指しているようなのですが、実感があると同時に、面白いなと思ったので、推しています。(ソースをご存じの方いらっしゃればご教示ください。)

――逆に歳時記に載ってはいるけれど、時代に合っていないと思われる季語、あるいは季節分類を再考すべきだと思われる季語があれば、教えてください。

例えば「縄跳」(冬)など、直感的に季節の感じが分かりにくいものもあると思うのですが、季語に対して、削除したり、季節を修正したりする必要を今のところ感じたことはありません。

――季語について勉強になるオススメの本があったら、理由とともに教えてください。

夏井いつき『絶滅寸前季語辞典』(筑摩書房、2010年)夏井いつき『絶滅危急季語辞典』(筑摩書房、2011年)です。

文字通り、現代であまり触れなくなった季語を集めている本です。エッセイ集的な側面もあるので、勉強というよりは、気軽に楽しめるのではないかと思います。

夏井いつきの「絶滅季語」シリーズは、ちくま文庫で入手可能。

――最後の質問です。無人島に一冊だけ歳時記をもっていくなら、何を持っていきますか。

Kindleの『合本俳句歳時記』です。スマホも兼ねていますし、テントや水、発電機など、荷物が重くなりそうなので。

――以上の質問を聞いてみたい俳人の方がもしいれば、ご紹介いただけますか。テレフォンショッキング形式で…

「静かな場所」「秋草」の対中いずみさんからお話をお聞きしたいです。まだこのコーナーに関西在住の方は出ていらっしゃらないので、ボールを西に投げてみたく思います。

――お忙しいなか、ご協力ありがとうございました。それでは次回は、「静かな場所」「秋草」の対中いずみさんにお願いしたいと思います。お楽しみにお待ちください。


【今回、ご協力いただいた俳人は……】
中西亮太(なかにし・りょうた)さん
1992年生まれ。「艀」同人を経て、現在「円座」「秋草」所属。



【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

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