新年の季語(1月)】読初

新年、初めて読書をすること。「読始」とも。

新年にはじめて朗々と音読することを言った。男は漢籍、女は草紙などを読み上げた。

古典も含め、読まれる本は時代によって変わるため、時代性が(逆張りでどう外すかという点でも)感じられる季語である。じっさいに「読初」の句では様々な書物が詠まれているが、類想を免れないことが多い。


【読初(上五)】
読初や卓上白文唐詩選 高浜虚子
読初や幼に文字を指にさし 中村汀女
読初の本の大きな活字かな 細川加賀
読初は一尾の鯉となりし僧 宇佐美魚目 
読初の「おくのほそ道」声に出て 神蔵器
読初の和漢朗詠集は春 岩崎照子
読初の葩餅の由来かな 大橋敦子
読初めの突如大海原へ出づ 鷹羽狩行
読初はアジア異母兄物語 宇多喜代子
読初は黄なる表紙の奈良百句 栗田やすし
読初の巻の十四の東歌 大石悦子
読初のさても出でます恵比須紙 大石悦子
読初の天平の海広かりし 岩淵喜代子
読初は久方ぶりのトルストイ 向井ゆたか
読初のぱつと開けたるところ読む 拓植史子
読初は去年の読初のつづき 鈴木牛後
読初のアッシャー屋敷日暮時 四ッ谷龍
読初や栞代りの冬紅葉 岩田由美
読初のメロスまだまだ走りをり 涼野海音

【読初(中七)】
「いづれの御時にか」読初をこゑに出す 上田五千石
ずぶずぶの中年読初のサリンジヤー 太田うさぎ

【読初(下五)】
霜、雪のごとくめでたし読初す 久保田万太郎
酒強く恥しき歌人読初めに 矢島渚男


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