【冬の季語】時雨

【冬の季語=初冬(11月)】時雨

【ミニ解説】

秋の末から冬の初めごろに、降ったりやんだりする小雨。

朝、昼、夕といった特別の時刻はない。

俳句では「冬の季語」となっている。動詞で「しぐれる」とすることもある。

シーズン最初の時雨は「初時雨」。

和歌や文学では涙や悲しみ、侘しさの比喩として用いられてきた。時雨に「しぐれ」の読みが充てられるようになったのは平安時代ごろから。

俳句には「蟬時雨」(夏)や「虫時雨」(秋)のように、比喩的に用いた季語もある。

「時雨忌」は、芭蕉の命日のこと。陰暦の10月12日。


【時雨(上五)】
時雨ふるみちのくに大き佛あり 水原秋櫻子
これは時雨だ樅の木の謙虚な守り 秋尾敏

【時雨(中七)】
翠黛(すゐたい)の時雨いよいよはなやかに 高野素十
通天や時雨やどりの俳諧師 川端茅舎
美しき時雨の虹に人を待つ 森田愛子
光りつつ沖より時雨来たりけり 石原八束
愛なくて時雨を待っている一人 立岩利夫
万年筆時雨に冷えてありにけり 田中裕明

【時雨(下五)】
天地の間にほろと時雨かな 高浜虚子
湯ぶねより一とくべたのむ時雨かな 川端茅舎
塔しのぐもののなければ時雨くる 上田五千石
鍋物に火のまはり来し時雨かな 鈴木真砂女
うつくしきあぎととあへり能登時雨 飴山實
木の瘤の腥くある時雨かな 田中裕明
敦賀より北に用ある時雨かな 山本洋子 
ことごとく蓮折れてゐる時雨かな 対中いずみ
破門状書いて破れば時雨かな 詠み人知らず


horikiri