2024年、1年にわたって連載された「秋草」主宰・山口昭男による「俳句日記」の単行本化。365日にわたる365句に、その日の日記が付録する。末尾のコメントによると、作品については、虚子編『新歳時記』(三省堂)に沿って季語を選択していくこととし、そのプロセスのなかで「今まで使ってこなかった季語」についても「どんどん取り入れ」たという。時に過去のことを回想し、時に波多野爽波と田中裕明について触れ、自身の作句や指導の「作法」についてゆく、というこの編集スタイル(つまり一種の「断章」形式)を十分に活かし切った一冊である。
逆に、狭い意味での「日記」、つまりその日のことを記録するような記述はあまりに少ない。たとえば、1月23日は「ある日、夕食に煮凝が出て来た。」という一文からはじまる。書かれているのは、季語のことであり、俳句のことであって、自身のことではない。そのあたり、〈うつすもの何もなき水爽波の忌〉(10月18日)という句が、この一冊を象徴しているようでもある。
山口昭男句集『俳句日記2024 花信草信』(ふらんす堂、2025年)
価格 2,420 円(税込)
四六判変形上製クロス装 390ページ
ISBN 978-4781417370