【春の季語=三春(2月〜4月)】落椿

春先、つやつやした肉厚の葉の中に花を咲かせる「椿」が、花びらごと散らずに、一花まるごと、ぽとりと地面に落ちること。または、その落ちた椿のことをいう。

冬の季語である「山茶花」は、椿と似ているが、花びらが一枚いちまい散る。

椿が落ちる句といえば、何といっても、〈赤い椿白い椿と落ちにけり 河東碧梧桐〉が有名である。


【落椿(上五)】
落椿夜は首を持ちあげて 柿本多映
落椿われならば急流へ落つ 鷹羽狩行
落椿とはとつぜんに華やげる 稲畑汀子
落椿地(つち)の起伏のあきらかに 広渡敬雄
落椿蛸這ひ上る崖といふ  加田由美
落椿溶けつつ土と別の笑ひ 関悦史
落椿肉の限りを尽くしたる 曾根毅

【落椿(中七)】
もう空は見ぬ落椿ばかりなり 今瀬剛一
雨恋し恋しと落椿腐る 近恵

【落椿(下五)】
きさらぎの手の鳴る方や落椿 橋閒石
それきりのあとさきもなき落椿 加倉井秋を
千年を咲き千年の落椿 大石悦子
待つといふ時は流れず落椿 西宮舞
海光や蕊まつすぐに落椿 神戸由紀子

【その他の季語と】
かたまれる蝌蚪の真中へ落椿 原石鼎


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】



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