【春の季語】海苔

【春の季語=初春(2月)】海苔

現在ではいつでもスーパーなどで手軽に買えるが、初摘み(=「新海苔」)は11月から12月、その後3月中旬頃まで二番摘み、三番摘みと順々に行われてゆく。水温が低ければ低いほど栄養豊かで良いものができるため、寒い冬は喜ばれ、俳句では「初春」の季語とされている。

毎日将軍家に鮮魚を献上しなければならなかった江戸の漁師が、冬になると生簀にたくさんの海苔が生えることに気づいて、養殖をはじめたとされるのが、芭蕉(1644-1694)も生きた貞享・元禄年間(1684~1703年)。「武江年表」によれば、大森で海苔養殖が始まったと記されている。

芭蕉が〈衰ひや歯に喰ひあてし海苔の砂〉と詠んでいたころは、江戸の最新流行のひとつであったということになる。


【海苔(上五)】
海苔焼いて三人の子にわかちけり 久保田万太郎
海苔あぶる手もとも袖も美しき 瀧井孝作
海苔掻きて森より帰り来るごとし 山口誓子
海苔とりの水を蹴立てて歩きけり 上野泰
海苔を搔く疎開のままに縁付きて 品川鈴子
海苔舟の梅丸といふ繋がるゝ 今井杏太郎
海苔粗朶の縦列富士を要とす 大屋達治

【海苔(中七)】
荷を解けば浅草海苔の匂ひ哉 正岡子規

【海苔(下五)】
独り来て鵜に近々と海苔あらふ 佐野まもる

【ほかの季語と】
海苔干して居る女等の著ぶくれて 高濱年尾
おにぎりに海苔巻く係文化祭 金子敦


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】


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