【春の季語】行く春(行春)

【春の季語=晩春(4月)】行く春

「ゆくはる」と読む。春が過ぎ去ろうとしていることをいう。

なかなかに古い言葉で、初出は10世紀の和歌、

行春のたそがれ時になりぬれば鶯のねもくれぬべらなり(歌仙本貫之集 四)

である。芭蕉の「猿蓑」に書かれた俳諧

行春を近江の人とおしみける

や、船を千住で降り、矢立初めとして詠んだ

行く春や鳥啼き魚の目は泪

はおそらく最も有名な作。

「逝く春」などとも表記し、「春惜しむ」という季語も生まれてくる。「春行く」とも。


【行春(上五)】
ゆく春や心に秘めて育つもの 松尾いはほ
行く春の千体仏の燭ゆれて 細見綾子
行春や涙をつまむ指のうら 八田木枯
行春の傘のつくづく繕はれ 田中裕明
行春のわが家の色の卵焼 小川軽舟

【行春(中七)】
写し絵や行く春の夜の蝋燭火 石塚友二
訃報また行く春ごとに慌し 高濱年尾

【行春(下五)】




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