【夏の季語】新緑/緑さす 緑夜

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【夏の季語=初夏(5月)】新緑/緑さす 緑夜

【ミニ解説】新緑は「晩春から初夏にかけての若葉のみどり」のこと。同じく初夏の季語である「若葉」や「青葉」が葉そのものにクロースアップしているのに対し、「新緑」はもうちょっと引きの構図ですね。「新樹」というのもありますが、いわば両者の中間点として、木そのものに焦点があたっている感じ。

ただ、「若葉」が江戸初期から使われてきたのに対し、「新緑」という季語は明治の漢文脈のなかで登場してきたあたらしい季語。初期の用例としては、渡辺水巴(1882-1946)の〈新緑やたましひぬれて魚あさる〉などがありますが、やはりこの季語を決定的にメジャーなものにしたのは、やはり鷹羽狩行の〈摩天楼より新緑がパセリほど〉かもしれません。1969年4月、狩行38歳のときの一句。同じくらい有名なのが、たぶん金子兜太の〈きよお!と喚いてこの汽車はゆく新緑の夜中〉、というかこっちはむしろ「きよお!」で有名なのですが。

新年、新入生、新茶、新涼、新酒、新豆腐…と、俳句はほんとうに「新しいもの」好き。この異様なまでの「新しさ」賛美は、つらいことも苦しいことも改まってしまえば水に流して…という必ずしも褒められたものではない思考の癖と結びついているような気もするのですが、そう思えば「新緑」のエネルギーに溢れる感じ、というのは案外、いい俳句をつくるには邪魔なものかもしれません。

ところで傍題にある「緑さす」「緑夜」は、人によっては「緑」だけでも季語として扱うという立場もあるわけですが、しかしかの有名な〈非常口に緑の男いつも逃げ〉の「緑」はいかに。『角川大俳句歳時記』には「新緑」の傍題で掲載されている一方で、現代俳句協会編『現代俳句歳時記』では、色の一つとして無季の分類をし、掲句を掲載しています。

【関連季語】五月、初夏、若葉、新樹、青葉など。


【新緑(上五)】
新緑やたましひぬれて魚あさる 渡辺水巴
新緑にさだかならざる目鼻かな 京極杞陽
新緑の街をゆく掌をポケットに 藤後左右
新緑の山に黒木の樅多し 高野素十
新緑やうつくしかりしひとの老 日野草城
新緑の庭より靴を脱ぎ上る 山口誓子
新緑に夫たるべしとせし日なり 山口誓子
新緑に犬が真夏の呼吸づかひ 山口誓子
新緑に美貌の母を子が誇る 山口誓子
新緑に豹をさなくて雌を知らず 山口誓子
新緑に電燈点きし音はせず 山口誓子
新緑に伸びし眉毛を切りおとす 相馬遷子
新緑や夜まで遊ぶ鹿を見し 阿部みどり女
新緑の山径をゆく死の報せ 飯田龍太
新緑に吹きもまれゐる日ざしかな 深見けん二
新緑やこつてり絵の具つけて描く 高田風人子
新緑の山の膨らむ母のくに 加藤憲曠
新緑の香に新緑の風を待つ 稲畑汀子
新緑といふしづけさと明るさと 稲畑汀子
新緑やもつたいなくて帽子とる 太田土男
新緑のレース綴れり御堂筋 西村和子
新緑や愛されたくて手を洗う 対馬康子
新緑に立つけだるさは祖母ゆずり 鎌倉佐弓
新緑やまなこつむれば紫に 片山由美子
新緑や旅の始めに腰掛けて 望月周
新緑の闇よりヨーヨー引き戻す 浦川聡子
新緑の空中庭園より電話 浦川聡子
新緑や小鳥はいつも濡れてゐる 松王かをり

【新緑(上五以外)】
風邪引いて炬燵を愛す新緑裡 日野草城
産みたての卵や一つ大新緑 橋本夢道
植ゑられてすぐ新緑に加はれり 上田五千石
梅崖に樅の新緑翼張る 佐藤鬼房
きよお!と喚いてこの汽車はゆく新緑の夜中 金子兜太
都電老いぬ新緑に窓開け放ち 岡本眸
摩天楼より新緑がパセリほど 鷹羽狩行
グラビアを焼き新緑の地をこがす 鷹羽狩行 
肉食にくちびる飽きし夜の新緑 鷹羽狩行
夫を待つ坂多き街新緑の 対馬康子
名乗りあふごと新緑の色違ふ 毛利晴美

【緑さす(上五)】
緑さす松や金欲し命欲し 石橋秀野
緑さす漬物桶にひざまづく 野沢節子
緑さす机の角に蚤殺す 百合山羽公
緑さす三鬼波郷の亡き後も 小林康治
緑さす水面の暮れてゆきにけり 柏柳明子

【緑さす(上五以外)】
ひそと踊る素描ニジンスキイ緑さす 小池文子
山鳩の死に緑さす山の樹々 三谷昭
かく勁き米寿の碑文緑さす 能村登四郎
享くる血のおもき点滴緑さす 鷲谷七菜子
自画像は描きかけのまま緑さす 鷹羽狩行
モリアヲガヘルの卵あはあは緑さす 嶋田麻紀
糸底にサンドペーパー緑さす ふけとしこ

【緑夜/緑の夜】
子の皿に塩ふる音もみどりの夜 飯田龍太

【緑】
天を航く緑濃き地に母を置き 野澤節子
非常口に緑の男いつも逃げ 田川飛旅子


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