冬の季語

【冬の季語】浮寝鳥

【冬の季語=初冬〜晩冬(11〜1月)】浮寝鳥

水に浮いたまま眠っている「水鳥」のこと。

これらのほとんどが北方から渡ってくる「渡り鳥」だが、環境省が人工衛星をつかった調査をはじめたのは、平成17年、つまり2005年のことである。そこでわかったルートの一部は、このページから見ることができる

国にとってなぜかれらが重要かといえば、それはまずもって病原菌を運ぶ存在でもあるから。インフルエンザウイルスは本来、カモやアヒルなど足に水かきのある水鳥、渡り鳥に感染するウイルス。これまでの主な人インフルエンザウイルスは渡り鳥から直接感染してきたものではないが(ニワトリやブタ由来ですが)、変異による強毒化のおそれは常にあるので、粘り強い調査が求められる分野でもあります。

グローバルで、ダイナミックで、しばしばポリティカルでさえある対象であるとはいえ、しかしいったん渡ってきて水辺でのんびりしている「水鳥」は、いわば芸能人が正月にハワイにいくようなもの。

人間は寒い寒いといって外に出たがらないのに、沼や湖を賑やかしている鳥たちは、外敵に襲われることも少ないから、のんびりと水浴びをしたり、寝ていたりする。古来、浮寝鳥は「憂き寝」との言葉遊びで詠まれてきたものの、俳句では荒涼とした冬の景のなかの賑やかさ、あるいはのんびりとした感じを詠むことが多いようだ。


 【浮寝鳥(上五)】  
浮寝鳥うつゝに尾振る一羽あり 鈴木花蓑
浮寝鴨数ふるたびに数増ゆる 右城暮石
浮寝鳥波来て尻のあがりけり 石田勝彦
浮寝鳥また波が来て夜となる 寺山修司
浮寝鳥金銀の星待ちてをり 皆川盤水
浮寝鳥覚めて失ふ白ならむ 後藤比奈夫
浮寝鳥おのれを消してゐるつもり 鷹羽狩行
浮寝鳥同心円を出でざりき 柴田奈美
浮寝鳥見えたる国はわたしかな 攝津幸彦
浮寝鳥流されさうで流されず 中嶋秀子
浮寝鳥深眠りにて嵩減りぬ 小林貴子
浮寝鳥よりも静かに画架置かれ 村上鞆彦

【浮寝鳥(中七)】
麻酔よく効きて浮寝の鴨のごと 大石悦子
さめてまた一と聲浮寝鳥のこゑ 田中裕明

【浮寝鳥(下五)】
くるくると堀江の鴨の浮寝かな 支考
初雪の夢や見るらん浮寝鳥 正岡子規
燦爛と波荒るるなり浮寝鳥 芝不器男
羽摶きて覚めもやらざる浮寝鳥 高浜虚子
水尾ひいて離るゝ一つ浮寝鳥 高野素十
この旅の思ひ出波の浮寝鳥 星野立子
いつとなくたがいちがひの浮寝鳥 阿部青鞋
しばらくは塔影に入る浮寝鳥 桂信子
茄で卵むけば日向に浮寝鳥 桂信子
ふしあはせなど今更に浮寝鳥 能村登四郎
筑波嶺のいよいよとがり浮寝鳥 沢木欣一
まるき目を時に光らせ浮寝鳥 深見けん二
いくつかは貼絵の遠さ浮寝鳥 鷹羽狩行
山影を日暮とおもひ浮寝鳥 鷹羽狩行
靄の立つところに残り浮寝鳥 鷹羽狩行
餌の足ると餌の足らざると浮寝鳥 鷹羽狩行
想あたためてゐるやも知れず浮寝鳥 西嶋あさ子
読んでゐるときは我なし浮寝鳥 田中裕明
正午すでに暮色の都浮寝鳥 田中裕明
出汁昆布の箸をつるりと浮寝鳥 山口昭男
人間はぞろぞろ歩く浮寝鳥 田丸千種
水底の藻の暮れ果てし浮寝鳥 長谷川櫂
上空に使はぬ空気浮寝鳥 正木ゆう子
ともしびに片寄せられて浮寝鳥 片山由美子
しばらくは羽を忘れて浮寝鳥 西宮舞


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