【秋の季語=三秋(8月〜10月)】鰯雲/鱗雲 鯖雲
夏の雲はもくもくと盛り上がった「雲の峰」。
秋の雲は、天高く(「天高し」も秋の季語)、大漁の鰯のように(「鰯」も秋の季語)見える小さな雲のあつまり。
【鰯雲(上五)】
いわし雲おおいなる瀬をさかのぼる 飯田蛇笏
鰯雲鯨が食べてしまいけり 前田吐実男
鰯雲しづかにほろぶ刻の影 石原八束
鰯雲鬚そつて四時頃出よう 杉本 零
鰯雲美しき死を夜に誓ふ 文挾夫佐恵
鰯雲子は消ゴムで母を消す 平井照敏
鰯雲見てゐてこころ連れ去られ 能村研三
いわし雲日暮は鱗ゆるびけり 吉田千嘉子
鰯雲声にならざるこゑのあり 照井 翠
【鰯雲(中七)】
【鰯雲(下五)】
やまびこをつれてゆく尾根いわし雲 飯田蛇笏
まなこ澄む男ひとりやいわし雲 赤尾兜子
はるかなり進駐軍といわしぐも 大牧広
ついそこと言うてどこまで鰯雲 宇多喜代子
生涯のいま午後何時鰯雲 行方克巳
返球の濡れてゐたりし鰯雲 今井 聖
敗れたる国に生まれて鰯雲 櫂未知子
丸善にノートを買つて鰯雲 依光陽子
ポケットにギターのピック鰯雲 後閑達雄
いつかてふ日は訪れず鰯雲 井出野浩貴
【鱗雲】
きりん老ゆ日本のうろこ雲食べて 松尾隆信
【鯖雲】
鯖雲のそのうしろから鯨雲 岩木茂