【秋の季語】名月/満月 望月 今日の月 月今宵 十五夜 芋名月

【秋の季語=中秋(9月)】名月/明月 満月 望月 清月 望の月 今日の月 月今宵 今宵の月 十五夜 芋名月

【解説】陰暦8月15日が、いわゆる中秋の名月。陰暦なので、現行のカレンダーでいくと、9月中旬になることが多く、年によっては、10月に入ることも。

陰暦では月の見えない新月の日が「月立ち=ついたち=1日」でした。そして、ひと「月」というのは、新月から満月を通って、ふたたび新月へと戻る周期のこと。これが12回繰り返されると、だいたい季節は一めぐり。だいたい、15日が「満月」になるので、中秋の名月のことは「十五夜」ともいいます。

まあ、1年は365日ではなく、355日くらいになるので、3年に一回「閏月」を入れて調整が必要になるわけですが、2020年は閏月があったので、全体的にカレンダーがうしろにずれて、10月1日に「中秋の名月」となりました。3年に1回くらい、遅めの「名月」となるわけです。2023年は9月29日、2025年は10月06日、2028年は10月03日となるようです。

後藤夜半に〈今日の月すこしく欠けてありと思ふ〉という句がありますが、中秋の名月が「満月」になるとは限らず、翌日となることもあります。しかし、まんまるなお月様を期待してしまうというのが、人情というもの。

俳句で「満月」や「望月」といえば、これまた「名月」のことを指します。冬の季語には「冬満月」、春の季語には「春満月」がありますね。

「名月」の満たされた感じを愛でるのは、収穫シーズンのお祝いでもあります。いっぱい食べたあとのおなかのように、まんまるなお月さま。どこか幸福感に満ちていて、そして幸福を祈るようなイメージが、昔からあったのでしょう。昔の日本では「里芋」を重要な食料としていたため、中秋の名月は「芋名月」ともいわれます。

最近は、「スーパームーン」なんて言葉もよく聞かれるようになりましたが、こちらは天文学ではなく占星術のことば。ちょっとスピリチュアルな響きがあります。「パワースポット」という言葉が使われ始めたのとほぼ同時期かと思いますが、国立天文台も「よくわからない」と回答しています。くわしくは、リンク先をご覧ください。

ちなみに、明るく月が見えることを「良夜」、曇っていて月が見えないことを「無月」、雨が降っていて見えないことを「雨月」という季語で表します。秋雨、台風シーズンですから、あまり月が見えないことも多いですよね。俳句をつくるうえでは、これらの季語をうまくチョイスすることも大事です。

【関連季語】月、月見、良夜、無月、雨月、十六夜、枝豆、立待月、居待月など。


【名月】
名月や畳の上に松の影 宝井其角
名月や煙はひ行く水の上 服部嵐雪
けふの月目のおとろへを忘れけり 諸九尼
名月を取てくれろとなく子哉 小林一茶
名月や叩かば散らん萩の門 正岡子規
名月や院へ召さるる白拍子 井上井月
名月や十三円の家に住む 夏目漱石
名月や台上の人登れといふ 高浜虚子
背負はれて名月拝す垣の外  富田木歩
名月やいまは亡き人吉右衛門 久保田万太郎
名月や江戸にいくつの潮見坂 吉岡桂六
名月や急流に向き木樵の戸 大峯あきら
名月や橋の下では敵討ち 野坂昭如
名月の渡りゆく空ととのへり 稲畑汀子
あさつての名月待てぬ者同志 稲畑汀子
名月や構えて大き猫の面 宇多喜代子
よろこんで名月を蹴る赤子かな 仙田洋子

【明月】
明月や無筆なれども酒は呑む 夏目漱石
明月や子を失ひし乳棄つる 山下陽弘

【今日の月】
十五から酒をのみ出てけふの月 宝井其角
盗人の首領歌よむけふの月  与謝蕪村
けふの月馬も夜道を好みけり 村上鬼城
やゝ寒し閏遅れの今日の月 松藤夏山
今日の月市のけぶりに曇りけり 松藤夏山
今日の月隔離の窓にいつまはる 藤後左右
今日の月すこしく欠けてありと思ふ 後藤夜半
体温を保てるわれら今日の月 三橋敏雄
今日の月生むたかぶりに海荒るる 高橋悦男

【満月】
満月を生みし湖山の息づかひ 富安風生
満月光 液体は呼吸する 富澤赤黄男
一満月一韃靼の一楕円 加藤楸邨
芒抱く子に満月を知らさるる 阿部みどり女
満月よ黒髪の子を吾も生まむ 三橋敏雄
大満月つぎが最後の呼吸(いき)かもしれぬ 折笠美秋 
満月を四つに畳んで持ち帰る ねじめ正一
山の湖満月箔を伸ばしけり 大串章
水平に水平に満月の鯨 柿本多映
誰にでも見える満月よくよく見る 池田澄子
ほほえみのやめどき迷う満月下 池田澄子
ぬつと出て母のゐさうな満月よ 大木あまり
満月や耳ふたつある菓子袋 辻田克巳
満月や泥酔という父の華 佐川啓子
満月の終着駅で貝を売る 武馬久仁裕
満月と母を残して帰りけり 寺林留美子
満月のひかりで探す家の鍵 対馬康子
ポケットに満月そこまで歩こうか 鳴戸奈菜
満月の向かう側より呼ばれけり 金子敦
ビール工場からあふれさうな満月 能城檀
満月のあめりかにゐる男の子 小林苑を 
満月の浅瀬は砂を吐きつづけ 山岸由佳
電柱の努力で満月のはやい 福田若之
満月をそのまま使ふ野外劇 平井皆人

【望月・望の月】
望の月わがしはぶきも照らさるる 日野草城
望月に九十の面テ晒しけり 阿部みどり女
もう誰もいない地球に望の月 山﨑十生
望の月呑みたる真鯉包丁す 長谷川櫂

【望の夜】
望の夜のめくれて薄き桃の皮 眞鍋呉夫
望の夜やあらくさなれど穂の揃ひ 上田日差子

【十五夜】
十五夜の雲のあそびてかぎりなし 後藤夜半
十五夜の草くるぼしを没しけり 久保田万太郎
十五夜に手足ただしく眠らんと 西東三鬼
十五夜の高まりゆきて力ぬけ 松本たかし
蝦の髭うごく十五夜の調理台 橋閒石
十五夜の照るまでうんか田を払ふ 百合山羽公
十五夜を絵本のやうに泣きに泣く 川崎展宏
十五夜のルーペを置いて立ち上がる 池田澄子
十五夜の潜水艦は水の中 攝津幸彦
十五夜にいつたん帰京ゐたします 岡田史乃
十五夜とむかふわたしといふひとり 三輪初子
十五夜のやっと人肌ほどとなり こしのゆみこ
十五夜の南瓜を一つ裏返す 岸本尚毅
十五夜の松風に雨まじりつつ 岸本尚毅
十五夜のみんな普通に生きる歌 中内亮玄

【月今宵】
形変へ光を変へて月今宵 湖東紀子

【芋名月】
背戸畑の芋名月となれりけり 木下夕爾
蔵王嶺の芋名月となりしかな 角川源義
わたつみの太郎芋名月とや言はむ 岡井省二
畳踏む漁夫の大足芋名月 伊丹三樹彦

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