火種棒まつ赤に焼けて感謝祭
陽美保子
明日、11月26日木曜日は、米国最大の祝日の一つである感謝祭(Thanksgiving Day/サンクスギビング•デー)。毎年11月の第4木曜日に定められている。起源は、1620年に英国から米国に渡った清教徒が、冬の厳しい寒さと飢えに苦しんだ際、原住民に智恵を授かったおかげで、翌年には多くの収穫に恵まれたことを神に感謝し、恩人の原住民を招いて会食したことだといわれている。
現在の感謝祭は、特定の宗教とは関係しない祝日で、家族や友人が集まり、日々の生活に感謝する日となっている。翌日の金曜日に休みを取り、週末にかけて4連休にする人が多く、例年ならば、この週末の前後は帰郷のための大移動が風物詩。日本における正月を思わせる行事だ。
人々は、家族揃って、この日に行われる催し物であるフットボールの大試合や、感謝祭パレードを楽しむ。米国各地で行われるパレードの中でもニューヨーク市のものは有名で、摩天楼の只中を、人気キャラクターをかたどった巨大なバルーンが練り歩く姿は圧巻。今年は、新型コロナウイルス環境下であるため、規模を縮小して開催予定。
そして最大の楽しみは、感謝祭の食事会(Thanksgiving dinner /サンクスギビング•ディナー)。 前日から家族総出で準備した、詰め物をした七面鳥の丸焼き・さつまいもに似たヤムの料理・グレービーソース・クランベリーソース・パンプキンパイなど、伝統的な料理を皆でいただく。
米国は移民の国であり、海外に郷里を持つ人も多いからだろう、家族だけでなく友人を誘うのも伝統のようだ。筆者家族も、過去に何回かご招待いただき、ひととき大家族気分を楽しんだ。
火種棒まつ赤に焼けて感謝祭
掲句を読むと、その会食会での豊かな時間が蘇る。
〈火種棒まつ赤に焼けて〉は暖炉が勢いよく燃えている様子を再現させるともに、この時期の外の寒さも彷彿させる。その暖かさに満ちた部屋には、感謝祭のご馳走でいっぱいの食卓とそれを囲む家族や友人の笑顔が見える。
そして、声も聞こえてくる。
”What are you thankful for?”
食卓では、「あなたは何に感謝しますか」という問いに答え、エピソードを語り合うのが倣い。
日頃は意識もしないような当たり前なことが、実は、有り難いことであったと気付く機会に満ちている今年。この感謝祭は、いつになく特別なものとなるだろう。
我が家は、夫と二人で祝う予定。
命あることに、
衣食住に恵まれていることに、
安全で健康でいられることに、
家族・友人に恵まれていることに、
今ここで体験する全てのことに感謝して。
そして読者の皆さんの安全とご健康と幸せをお祈りして。
Happy Thanksgiving! 良い感謝祭を!
(月野ぽぽな)
【執筆者プロフィール】
月野ぽぽな(つきの・ぽぽな)
1965年長野県生まれ。1992年より米国ニューヨーク市在住。2004年金子兜太主宰「海程」入会、2008年から終刊まで同人。2018年「海原」創刊同人。「豆の木」「青い地球」「ふらっと」同人。星の島句会代表。現代俳句協会会員。2010年第28回現代俳句新人賞、2017年第63回角川俳句賞受賞。
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