冬の季語

【冬の季語】冴ゆ・冴え

【冬の季語=三冬(11月〜1月)】冴ゆ・冴え

名詞としての「冴え」は大気・色・音などが澄みきったさま。

動詞としての「冴ゆ」では特に寒気の極まりを強調します。文語的な活用ならば「冴えず・冴えて・冴ゆ・冴るとき・冴えども」と活用する。

大気・色・音などの冴えは「鐘冴ゆ」「星冴ゆ」「月冴ゆ」「風冴ゆ」というように具体的な語を結びつけて表されることが多い。

日常語に近づけたかたちとしては「冴える」。

立春を過ぎてからの冴えは「冴返る」といい、こちらは春の季語である。


【冴ゆ(上五)】
影冴えて月の漁村の潮干かな 乙由
冴ゆる夜こころの底にふるるもの 久保田万太郎
風冴えて魚の腹さく女の手 石橋秀野
灯のさえて遺言状を書くならし 文挾夫
冬冴えのレールや鳩の広い食ひ 平林静塔
さえざえとまたなき夜空現れにけ 斎藤玄
波冴ゆる流木立たん立たんとす 山口草堂 

【冴ゆ(中七)】
満月の冴えてみちびく家路あり 飯田龍太
どの顔も冴ゆる証明写真かな 津田佐知子
CTの冴えの静かさ脳輪切り 榎本嵯督有

【冴ゆ(下五)】
今夜から夜が直るやら鐘さえる 小林一茶
葱畑日当りながら冴えにけり 野村喜舟
無口なりし父のかなしみ冴ゆる夜ぞ 矢島渚男
思惑を薄切りにして冴える街 手塚玉泉


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