季語・歳時記

【春の季語】冴返る

【春の季語=初春(2月)】冴返る

春めいた暖かさになってきたころ、にわかに寒さがぶりかえすこと。心の奥から寒さを感じるような、動的なイメージを持つ季語である。

なお、一般動詞としての「冴返る」は〈はっきりする〉〈勢いを取り戻す〉などの意味を持ちます。「余寒」は「立春」後の寒さをいう季語で、この時期の感覚を押し出したニュアンスも。

表記は「冴え返る」とすることもあるが、送りを少なく「冴返る」とすることが多い。


【冴返る(上五)】
冴返る音や霰の十粒程 正岡子規
冴えかへるもののひとつに夜の鼻 加藤楸邨 
冴え返る小便小僧の反り身かな 塩田俊子
冴返るまだ粗玉の詩句抱き 上田五千石
冴返る琳派ラカン派不受不施派 大上朝美
冴返るいつも不用意なるときに 後藤比奈夫
冴返るものに詩人の心電図 二村典子
冴返る身の海原に櫂の音 望月英男
冴返る夕三日月へハーモニカ  松尾隆信
冴返る旧居住者の鏡かな 北大路翼
冴返る夜空に眠るやうな蒼 澤田和弥

【冴返る(中七)】
柊にさえかへりたる月夜かな 内藤丈草
山がひの杉冴え返る谺かな 芥川龍之介
羅漢堂皆冴返り給ひけり 来馬胡鏡

【冴返る(下五)】
人に死し鶴に生れて冴え返る 夏目漱石
病人のやつぱり死にて冴返る 久保田万太郎
殺意とは愛の結晶冴返る 山﨑十生
東京に居るとの噂冴え返る 佐藤漾人
この町を支へし瓦礫冴返る 永田満徳
藁つんで水細々と冴返る 田中裕明 
掌がゴムの匂ひや冴返る 岩田由美
集合写真赤目の女冴えかへる 榮猿丸
ペーパーウェイトは鋼の卵冴返る 藤田哲史

【冴返る(その他)】
冴え返り冴え返りつつ春なかば 西山泊雲



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