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コスモスのゆれかはしゐて相うたず      鈴鹿野風呂【季語=コスモス(秋)】

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コスモスのゆれかはしゐて相うたず

鈴鹿野風呂(すずか・のぶろ))


十月ですよみなさん、もう、今年は三か月しかないそうですよ、やれやれ。

やれやれといえば、これを書いている24時間以内には、ノーベル文学賞も決まるそうで。

コスモスのゆれかはしゐて相うたず

鈴鹿野風呂は明治二十年、京都市左京区の生まれ。第七高等学校造士館(鹿児島)を経て、京都帝国大学の文学部国文学科卒業ののち、大阪・鹿児島などで教鞭をとったのち、京都にある武道専門学校の教員であった。日野草城、長谷川素逝らとともに『京鹿子』を創刊、この句集が出たころには主宰。

本名は登、子規と同じ音の本名を持ちながら、転じた俳号は「野風呂」、鈴鹿は本名らしいけれど、あの「味酒鈴鹿国」と言われたあの地名と思うと、それ、私に欲しいと思ってしまう。

俳号といえば、昔、何も知らずに俳句がたのしかったころに、俳号には「好きな花の名前なんかに子を付けたりすることがあるよ」と、好きな花を聞かれて、コスモスと答えたとき、「急がずにもう少しいろいろ考えたほうがいいかもしれないね」と言ってくれた人は誰だったんだろうか。コスモスは秋桜だ。

秋燕むれ越す雨の鈴鹿山

鈴鹿山伊勢路となりて葛の山

などの鈴鹿の句は、自分の名前を十分に意識したものだろう。そのほか水取、貴船山、大仏、高松、壬生、三上山、飛騨、奈良、渡月橋、堅田町、顔見世、苔寺、大琵琶、伊賀など、存分に地の力を使った野風呂の句の中で目立つのは案外、このような句だ。

揺れること、交わすこと、そんなコスモスはこれまでも多く句に現れてきたし、コスモスでなくてもそんな花はあるかもしれない。しかし、揺れて、行き交って、それでも互いにぶつからない(ようにみえる)花は、コスモスとその時期の風のさまをすごく引き連れてくる。

花全体の協調した動きとみることもあろうけれど、私にとっては、このそっけなさ、触れられることを厭う柔らかさがコスモスの好きなところ。

週末はまた連休とか、雨とか。やわらかな数日となりますように。

『ホトトギス同人句集』(1938年)

阪西敦子


金曜日の種本はこちら↑(早い者勝ちです)

【執筆者プロフィール】
阪西敦子(さかにし・あつこ)
1977年、逗子生まれ。84年、祖母の勧めで七歳より作句、『ホトトギス』児童・生徒の部投句、2008年より同人。1995年より俳誌『円虹』所属。日本伝統俳句協会会員。2010年第21回同新人賞受賞。アンソロジー『天の川銀河発電所』『俳コレ』入集、共著に『ホトトギスの俳人101』など。松山市俳句甲子園審査員、江東区小中学校俳句大会、『100年俳句計画』内「100年投句計画」など選者。句集『金魚』を製作中。

【阪西敦子のバックナンバー】

>>〔105〕淋しさに鹿も起ちたる馬酔木かな      山本梅史
>>〔104〕蜩や久しぶりなる井の頭                     柏崎夢香
>>〔103〕おやすみ
>>〔102〕月代は月となり灯は窓となる         竹下しづの女
>>〔101〕おやすみ
>>〔100〕おやすみ
>>〔99〕おやすみ
>>〔97〕七夕のあしたの町にちる色帋               麻田椎花
>>〔96〕大阪の屋根に入る日や金魚玉                 大橋櫻坡子
>>〔95〕盥にあり夜振のえもの尾をまげて          柏崎夢香
>>〔94〕行く涼し谷の向うの人も行く                  原石鼎
>>〔93〕山羊群れて夕立あとの水ほとり            江川三昧
>>〔92〕思ひ沈む父や端居のいつまでも             石島雉子郎
>>〔91〕麦藁を束ねる足をあてにけり                    奈良鹿郎
>>〔90〕はしりすぎとまりすぎたる蜥蜴かな        京極杞陽
>>〔89〕船室の梅雨の鏡にうつし見る     日原方舟
>>〔88〕さくらんぼ洗ひにゆきし灯がともり  千原草之
>>〔87〕おやすみ
>>〔86〕まどごしに與へ去りたる螢かな   久保より江
>>〔85〕日蝕の鴉落ちこむ新樹かな     石田雨圃子
>>〔84〕白牡丹四五日そして雨どつと    高田風人子
>>〔83〕春暁のカーテンひくと人たてり   久保ゐの吉
>>〔82〕かゝる世もありと暮しぬ春炬燵   松尾いはほ
>>〔81〕纐纈の大座布団や春の宵      真下喜太郎

>>〔80〕先生はいつもはるかや虚子忌来る  深見けん二
>>〔79〕夜着いて花の噂やさくら餅      關 圭草
>>〔78〕花の幹に押しつけて居る喧嘩かな   田村木國
>>〔77〕お障子の人見硝子や涅槃寺      河野静雲
>>〔76〕東京に居るとの噂冴え返る      佐藤漾人
>>〔75〕落椿とはとつぜんに華やげる     稲畑汀子
>>〔74〕見てゐたる春のともしびゆらぎけり 池内たけし
>>〔73〕諸事情により、おやすみ
>>〔72〕春雪の一日が長し夜に逢ふ      山田弘子
>>〔71〕早春や松のぼりゆくよその猫    藤田春梢女
>>〔70〕よき椅子にもたれて話す冬籠    池内たけし
>>〔69〕犬去れば次の犬来る鳥総松     大橋越央子
>>〔68〕左義長のまた一ところ始まりぬ      三木
>>〔67〕絵杉戸を転び止まりの手鞠かな    山崎楽堂
>>〔66〕年を以て巨人としたり歩み去る     高浜虚子
>>〔65〕クリスマス近づく部屋や日の溢れ  深見けん二
>>〔64〕突として西洋にゆく暖炉かな     片岡奈王
>>〔63〕茎石に煤をもれ来る霰かな      山本村家
>>〔62〕山茶花の日々の落花を霜に掃く    瀧本水鳴
>>〔61〕替へてゐる畳の上の冬木影      浅野白山
>>〔60〕木の葉髪あはれゲーリークーパーも  京極杞陽

>>〔59〕一陣の温き風あり返り花       小松月尚
>>〔58〕くゝ〳〵とつぐ古伊部の新酒かな   皿井旭川
>>〔57〕おやすみ
>>〔56〕鵙の贄太古のごとく夕来ぬ      清原枴童
>>〔55〕車椅子はもとより淋し十三夜     成瀬正俊
>>〔54〕虹の空たちまち雪となりにけり   山本駄々子
>>〔53〕潮の香や野分のあとの浜畠     齋藤俳小星
>>〔52〕子規逝くや十七日の月明に      高浜虚子
>>〔51〕えりんぎはえりんぎ松茸は松茸   後藤比奈夫
>>〔50〕横ざまに高き空より菊の虻      歌原蒼苔
>>〔49〕秋の風互に人を怖れけり       永田青嵐
>>〔48〕蟷螂の怒りまろびて掃かれけり    田中王城
>>〔47〕手花火を左に移しさしまねく     成瀬正俊
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>>〔24〕三月の又うつくしきカレンダー    下田実花
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>>〔21〕梅の径用ありげなる人も行く    今井つる女

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>>〔18〕藷たべてゐる子に何が好きかと問ふ  京極杞陽
>>〔17〕酒庫口のはき替え草履寒造      西山泊雲
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>>〔15〕酒醸す色とは白や米その他     中井余花朗
>>〔14〕去年今年貫く棒の如きもの      高浜虚子
>>〔13〕この出遭ひこそクリスマスプレゼント 稲畑汀子
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>>〔2〕クッキーと林檎が好きでデザイナー  千原草之
>>〔1〕やゝ寒し閏遅れの今日の月      松藤夏山




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