冬の季語

【冬の季語】鯨

【冬の季語=三冬(11月〜1月)】鯨

広範囲で回遊する鯨は、一般的に冬のあいだ、暖かな低緯度の海域で繁殖し、夏に向けて餌が豊富な高緯度の海域に移動するとされている。そのため冬の時期には脂肪を多く蓄えた「鯨」を食べることができ、冬が旬とされる。「勇魚(いさな)」ともいう。

現実社会では、1982年のIWC(国際捕鯨委員会)会議で商業捕鯨モラトリアムが採択されてから、日本(水産庁)は調査のためとして「捕鯨」を死守してきたが、折り合いがつかないために、2018年にIWCを脱退、31年ぶりに商業捕鯨を再開した。世界的に見ると反対論も多い。

このような文脈において、俳句だから、季語だからと、「伝統」へと単純に回収しかねない言葉として「鯨」を使うことには、それなりの注意が必要になりつつあるのかもしれない。

その一方で、メルヴィルの『白鯨』を例として、鯨は文化的な想像力を育んできた動物の一種でもあり、ある種のロマンティシズムを掻き立てるという面も否めない。


【鯨(上五)】
鯨よる浜とよ人もたゞならず  尾崎紅葉
鯨来よ補陀落想う夜気にこそ 渡辺誠一郎
鯨の頭潮噴く穴や深々と 小澤實
鯨みな戦争のこと知つてをり 仲寒蟬
鯨ほどの愛を受け止めてゐるか 矢野玲奈

【鯨(中七)】
京に入りて市の鯨を見たりけり 泉鏡花
ことごとく老いて鯨の煮ゆる昼 攝津幸彦
いつの生か鯨でありし寂しかりし 正木ゆう子
人恋ひし鯨のうたを聴きにきて 西宮舞
我が船の水脈を鯨が乱しけり ドゥーグル・J・リンズィー
あなたの眼ゆふべは鯨に似てゐたのに 杉山久子
潜りゆく鯨最終電車めく 神野紗希
わが産みし鯨と思ふまで青む 小川楓子

【鯨(下五)】
よき人の夢の中ゆく鯨かな 長谷川櫂
潮吹いて星と交信する鯨 鷲巣正徳
さみだるる沖にさびしき鯨かな 仙田洋子
気絶して千年氷る鯨かな 冨田拓也
誰の子と思いて我を見る鯨 杉浦圭佑
最終回みたいな街に鯨来る 斎藤よひら


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