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七夕のあしたの町にちる色帋   麻田椎花【季語=七夕(秋)】

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七夕のあしたの町にちる色帋

麻田椎花(あさだ・すいか))


ただいま(これは水曜の夜に書いています)夜十時半の東京の気温は三十三度、おかしいでしょほんと。昼が暑いのは(たとえそれが四十度であっても)覚悟するとして、夜中の三十度越えは…。ささやかな冷房をかけていても、皿を洗っただけで汗が吹き出します。今日、眠れるかしら…

そんなこんなであっという間に七月は過ぎて、先週あたりの日差や空の色(つまりすべては光の色尾の問題なのですが)は、確かに晩夏と思えて、まもなく立秋だというのに、今週は始めから猛烈な暑さ。

そんな中、木曜夜は旧暦七夕でありまして…

七夕のあしたの町にちる色帋

麻田椎花は明治二年京都の生まれ、この句集の編者。経歴には本名駒之助、生まれ年と出生地、それに「前中央公論社長」とあるばかり。この経歴、この人が、この句集を作らしめたのだろう、感謝感謝。ちなみにこの『ホトトギス同人句集』は三省堂から出版されている。

椎花が勤めていた西本願寺内に発祥した『中央公論』の前身である『反省会雑誌』とともに、1892年、京都から東京へ移る。

昭和十三年当時の住所は東京市本郷区西片町。西方の地名は今も住所や交差点に残っている。時々立ち寄る場所だけれど、十階以上のビルが林立していて、椎花が住んでいたころの様子はなかなか想像しにくい。

句は東京の景だろうか。七夕の日に向けてにぎやかに飾られた吹き流しなどの飾りは、大概が華奢でぺらぺらひらひらしたもの。確かにこの季節に暑苦しい飾りをされても嬉しくない。少しでも風に翻りやすいものを飾るようにしてきたのは至極当然のことだろう。

七夕翌日の朝のこと、前夜は少し風があったのだろう。千切れて地に落ちた七夕の名残を、「散る」と捉える。「帋」は「紙」の異字体、無造作に落ちた様子が軽やかな字から思われる。空は吹き晴れて、星がよく見えただろう。

七夕の翌朝、七夕の夜の濃さから解き放たれたような力の抜けた瞬間を描きながら、さらりとした情緒を残す。

残念ながら、週後半の東京は雨模様。少し気温が下がるのはいいのかもしれないけれど、ここまで異常でなければ、やはりせっかくだからカリッと晴れて欲しいとも思いつつ。

熱波の一方の豪雨の恐れもあるこのごろ、出られないときは出られないなりに、くれぐれもお大事に、おだやかな週末が過ごせますように。

『ホトトギス同人句集』(1938年)

阪西敦子


金曜日の種本はこちら↑(早い者勝ちです)

【執筆者プロフィール】
阪西敦子(さかにし・あつこ)
1977年、逗子生まれ。84年、祖母の勧めで七歳より作句、『ホトトギス』児童・生徒の部投句、2008年より同人。1995年より俳誌『円虹』所属。日本伝統俳句協会会員。2010年第21回同新人賞受賞。アンソロジー『天の川銀河発電所』『俳コレ』入集、共著に『ホトトギスの俳人101』など。松山市俳句甲子園審査員、江東区小中学校俳句大会、『100年俳句計画』内「100年投句計画」など選者。句集『金魚』を製作中。

【阪西敦子のバックナンバー】

>>〔96〕大阪の屋根に入る日や金魚玉                 大橋櫻坡子
>>〔95〕盥にあり夜振のえもの尾をまげて          柏崎夢香
>>〔94〕行く涼し谷の向うの人も行く                  原石鼎
>>〔93〕山羊群れて夕立あとの水ほとり            江川三昧
>>〔92〕思ひ沈む父や端居のいつまでも             石島雉子郎
>>〔91〕麦藁を束ねる足をあてにけり                    奈良鹿郎
>>〔90〕はしりすぎとまりすぎたる蜥蜴かな        京極杞陽
>>〔89〕船室の梅雨の鏡にうつし見る     日原方舟
>>〔88〕さくらんぼ洗ひにゆきし灯がともり  千原草之
>>〔87〕おやすみ
>>〔86〕まどごしに與へ去りたる螢かな   久保より江
>>〔85〕日蝕の鴉落ちこむ新樹かな     石田雨圃子
>>〔84〕白牡丹四五日そして雨どつと    高田風人子
>>〔83〕春暁のカーテンひくと人たてり   久保ゐの吉
>>〔82〕かゝる世もありと暮しぬ春炬燵   松尾いはほ
>>〔81〕纐纈の大座布団や春の宵      真下喜太郎

>>〔80〕先生はいつもはるかや虚子忌来る  深見けん二
>>〔79〕夜着いて花の噂やさくら餅      關 圭草
>>〔78〕花の幹に押しつけて居る喧嘩かな   田村木國
>>〔77〕お障子の人見硝子や涅槃寺      河野静雲
>>〔76〕東京に居るとの噂冴え返る      佐藤漾人
>>〔75〕落椿とはとつぜんに華やげる     稲畑汀子
>>〔74〕見てゐたる春のともしびゆらぎけり 池内たけし
>>〔73〕諸事情により、おやすみ
>>〔72〕春雪の一日が長し夜に逢ふ      山田弘子
>>〔71〕早春や松のぼりゆくよその猫    藤田春梢女
>>〔70〕よき椅子にもたれて話す冬籠    池内たけし
>>〔69〕犬去れば次の犬来る鳥総松     大橋越央子
>>〔68〕左義長のまた一ところ始まりぬ      三木
>>〔67〕絵杉戸を転び止まりの手鞠かな    山崎楽堂
>>〔66〕年を以て巨人としたり歩み去る     高浜虚子
>>〔65〕クリスマス近づく部屋や日の溢れ  深見けん二
>>〔64〕突として西洋にゆく暖炉かな     片岡奈王
>>〔63〕茎石に煤をもれ来る霰かな      山本村家
>>〔62〕山茶花の日々の落花を霜に掃く    瀧本水鳴
>>〔61〕替へてゐる畳の上の冬木影      浅野白山
>>〔60〕木の葉髪あはれゲーリークーパーも  京極杞陽

>>〔59〕一陣の温き風あり返り花       小松月尚
>>〔58〕くゝ〳〵とつぐ古伊部の新酒かな   皿井旭川
>>〔57〕おやすみ
>>〔56〕鵙の贄太古のごとく夕来ぬ      清原枴童
>>〔55〕車椅子はもとより淋し十三夜     成瀬正俊
>>〔54〕虹の空たちまち雪となりにけり   山本駄々子
>>〔53〕潮の香や野分のあとの浜畠     齋藤俳小星
>>〔52〕子規逝くや十七日の月明に      高浜虚子
>>〔51〕えりんぎはえりんぎ松茸は松茸   後藤比奈夫
>>〔50〕横ざまに高き空より菊の虻      歌原蒼苔
>>〔49〕秋の風互に人を怖れけり       永田青嵐
>>〔48〕蟷螂の怒りまろびて掃かれけり    田中王城
>>〔47〕手花火を左に移しさしまねく     成瀬正俊
>>〔46〕置替へて大朝顔の濃紫        川島奇北
>>〔45〕金魚すくふ腕にゆらめく水明り    千原草之
>>〔44〕愉快な彼巡査となつて帰省せり    千原草之
>>〔43〕炎天を山梨にいま来てをりて     千原草之
>>〔42〕ール買ふ紙幣(さつ)をにぎりて人かぞへ  京極杞陽
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>>〔2〕クッキーと林檎が好きでデザイナー  千原草之
>>〔1〕やゝ寒し閏遅れの今日の月      松藤夏山




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