酒よろしさやゑんどうの味も好し 上村占魚【季語=豌豆(夏)】

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酒よろしさやゑんどうの味も好し

上村占魚(うえむらせんぎょ)(星野立子)


近畿圏、首都圏をはじめ、緊急事態宣言が延長される一方、ワクチン接種がしずしずと始まった今週、大型連休(と、それに足してとった休暇は)は音もなく過ぎてゆきましたとさ。知らない間にあの潤沢にあった2週間が過ぎ、かといって、時間は2週間も進んでいて、本当に落ち込む。連休ロスだ。人と会うこと、出かけることが、計画が進まない原因だと思っていた永年の理解が完全に覆されて、結局何にも進まなかった失意の週末ですよ。

というわけで、本当はもう少し別の句を取り上げるはずだったのですが、傷心にやさしいこちらの句を。

上村占魚は1920年生まれ、熊本県は人吉の出身。十代で俳句を作り始め、東京藝大に進んでからは高濱虚子、松本たかしに師事。掲句を所収する句集『鮎』は占魚の第一句集で、十八歳から二十六歳までの句が入る。

松本たかしによる跋文には、占魚の酒好きについて、以下のようにある。

「非常な酒好きで、酒の為ならばどんなに高金を費やしても、ちつとも惜しい思はないと公言する。彼が、酒にありついた場合――いや、いよいよ確実に酒が飲めると事決まつてもう直ぐ其処に酒が待つてゐるといふ場合の、御満悦ぶりなどは、少し滑稽な気がする程である。」

 たかしをして、「滑稽」とまで言わせるほどの酒好きは、若さゆえのポーズもあるかもしれないが、実際、この句集にも酒の句が多い。

 蝙蝠や酒貯へてある館

 酒のむときめて押したり萩の門

 雪の日をとある宿場に酒のんで

 河童忌に田端の酒をすゝりけり

「一体、占魚の生活ぶりは、気分と調子が主になっており、作句態度にも同様のところがあると云へよう。インスピレーションに頼るという風である。」と、たかしが言うように、萩の句、雪の日の句、河童忌の句は、そういう気分があふれているけれど、蝙蝠の句などは、注がれても、抜栓されてもいないどころか、酒瓶の姿さえ見えているかどうかわからない「酒」というものについて、何か一種滑稽な執着を感じさせる怪作だ。

 酒よろしさやゑんどうの味も好し

そんな中にあって、この句の素直さは際立つ。これからこいつを飲むという気負いも、酒を飲んでいる自分の姿、ポーズを描くでもなく、すんなりと酒と莢豌豆への賞賛。酒がいい、莢豌豆の味もいい。当時、占魚は二十五歳ということを加えると、その達観に滑稽さが生まれるけれど、酒に起点して、「さやゑんどう()」と酒に添えるよう、視点を移すように描かれる豌豆は、かえってその鮮やかな色と青々しい味が引き立つ。

わざわざ季題をメインに置かないことによって、かえってその季題の臨場感をもたらすというバランスは、独特の「インスピレーション」がなす業かも知れない。

忘れていたけれど、そういえば連休中はよくこまこまと調理して、いろいろお酒を飲んだのだった。そのまま、本を読んだり、たまってた海外ミステリードラマを見たりしたのだった。そうだった、そうだった。

特に大型連休ではなくても、いい週末になりますように。

『鮎』(1946年)所収

阪西敦子


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【執筆者プロフィール】
阪西敦子(さかにし・あつこ)
1977年、逗子生まれ。84年、祖母の勧めで七歳より作句、『ホトトギス』児童・生徒の部投句、2008年より同人。1995年より俳誌『円虹』所属。日本伝統俳句協会会員。2010年第21回同新人賞受賞。アンソロジー『天の川銀河発電所』『俳コレ』入集、共著に『ホトトギスの俳人101』など。松山市俳句甲子園審査員、江東区小中学校俳句大会、『100年俳句計画』内「100年投句計画」など選者。句集『金魚』を製作中。



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