【秋の季語=晩秋(10月)】いちじく
西アジア原産の果樹。秋に実が熟れてきて食べごろとなる。
伝来当時の日本では、はじめ「唐柿(からがき、とうがき)」、ほかに「蓬莱柿(ほうらいし)」「南蛮柿(なんばんがき)」「唐枇杷(とうびわ)」などと呼ばれたが、いずれも異国情緒を帯びたネーミングである。
漢字では「無花果」と書かれるが、これは花を咲かせずに実をつけるように見えることに由来する。中国の古語では「映日果」「阿駔」「阿驛」などとも音写され、「底珍樹」「天仙果」などの別名もある。
【いちじく(上五)】
無花果のもとに陰りて水流る 山口誓子
無花果を捥がむと腕をねぢ入るる 波多野爽波
いちじく割り乳濡れの手は妣の齢 品川鈴子
無花果熟れとつととつとと風呂煙 八田木枯(少年期句集)
無花果割る六条御息所の恋 奥坂まや
いちじくに唇似て逃げる新妻よ 大屋達治
無花果を煮るふだん着の夕べかな 井越芳子
無花果の中に微細な星あまた 金子敦
無花果の皮むくやうに息漏るる 杉山久子
いちじくを食べた子供の匂ひとか 鴇田智哉
無花果の道あすはもうなき瞳 小田島渚
いちじくはジャムにあなたは元カレに 塩見恵介
【いちじく(中七)】
猿のように抱かれ干しいちじくを欲る 金原まさ子
うつくしき無花果むざと割りくるる 辻桃子
そそるとは無花果の口半開き 白石めだか
コンビニによらず白無花果を買ふ 彌榮浩樹
かさぶたじくじく無花果もう寝てる 赤羽根めぐみ
【いちじく(下五)】