【春の季語】山吹

【春の季語(晩春=4月)】山吹

北海道から九州の低山や丘陵地に普通に生える落葉の低木。晩春、5弁の花を咲かせる。日本原産種。
花は「山吹色」という色の名前になっているとおり、『万葉集』の時代から詩歌で詠まれてきた。

七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだになきぞ悲しき   兼明親王
かくしあらば 何か植ゑけむ山吹のやむ時もなく恋ふらく思へば  作者不詳 巻10-1907
山吹の花のさかりにかくの如 君を見まくは千年にもがも   大伴家持

なお、最初の歌については、太田道灌が歌道に入るきっかけとなったエピソードが残されている。農家で「蓑」を借りようとすると、娘が蓑の代わりに「山吹の枝」を差し出したというもの。歌を知らなかった道灌は立腹したが、のちに「実のひとつだになき=蓑ひとつだになき」という古歌をふまえていることを知ったという。実話かどうかは不明。


【山吹(上五)】
山吹に蛙のたゝく扉かな 建部巣兆
山吹の咲くをまぶしとみたるのみ 久保田万太郎
山吹の一枝にのれる花のかず 深川正一郎
山吹の風吹き入りて能衣裳 宇佐美魚目
山吹の咲き終りたる閑な枝 辻桃子
山吹の散り浮く沢に漱ぐ 若林哲哉

【山吹(中七)】
川波に山吹映り澄まんとす 高濱虚子
枝かはすところ山吹花かさね 皆吉爽雨

【山吹(下五)】
眼帯の朝一眼の濃山吹 桂信子



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