ピザ食ふや双六の世をそのままに 西生ゆかり【季語=双六(新年)】

ピザ食ふや双六の世をそのままに

西生ゆかり

おなかが空くまできょうだい、親戚達と双六大会。「ピザ来たよー!」と呼ばれたらそのまま食卓へ駆け出して熱々のピザにかぶりついても怒られない。だって今日はお正月。私の駒は「サイコロの1が出たら10進む それ以外は一発芸3連発」のマスにいるけれどまあいっか、いとこや親戚のおじちゃん達を笑わせるのも悪くない。今はピザに集中しよう。熱々のチーズをびよんと伸ばして食べる、ちょっとお行儀悪が許されるお正月の夕ご飯の方が大切だから。

双六や人生ゲームが一層盛り上がる新年。先日久々に双六のマスを見てみると、
「サイコロをふって1が出たらあがり、それ以外は最初からやり直し」
「3億円当たるも豪遊して破産 罰ゲームとしておどる」
など、現実では御免被りたいなかなかとんでもないことが書かれていた。
掲句にある「双六の世」もなかなかシビアである。明治~大正時代に流行した「令嬢成長双六」や「少年進軍双六」など少年少女の人生をなぞる例を見ても、古くより双六は卓上にもうひとつ世界が築かれている。現実世界も禍福は糾える縄の如し。まさかの災難もあれば思いがけずのラッキーもあるが、双六の世はその振れ幅がとにかく大きいのだ。
双六の醍醐味は現実ではありえない展開を仮想体験しつつ、とんでもない不幸はあくまでも遊びとしてみんなで笑い飛ばすこと。この先一年間待ち受けている大変なことだってなんとなく乗り越えられるような気がしてくる。疲れたら一回休みでピザを食べよう。時が満ちればまた一気に駒を進められる時が来るはずだから。

(西生ゆかり 句集「パブリック」より)

明けましておめでとうございます。
今日は元日。今回は新年の景の中にあるピザの句を鑑賞させていただきました。おせち料理やお雑煮など各地方それぞれの家庭にある伝統の味で彩られた新年の食卓も素敵ですが、ちょうど50年前に話題となったククレカレーのCM「おせちもいいけどカレーもね♪」のフレーズが今でも耳に残るように、時にジャンクな味も恋しくなるもの。
ファストフード店のお正月メニューのCMが流れるたびにいいなぁ…と食欲を刺激された経験はありませんか?
新年に限らず、気の置けない家族や友人同士で「今日のお昼、ピザ頼まない?」とメニューを出して盛り上がるのもデリバリー食の楽しみのひとつですよね。…とここまで書いておきながら大変なことに気付きました。私事ながら年末年始で帰省中の今、私の実家は宅配ピザの配達エリアの遥か外であることに。今回は既に高まったピザ欲を鎮めるため、冷蔵庫の残り物と大掃除で出てきたあり合わせの食材で作るサクサクおやつピザのレシピをご紹介します。

基本の材料はこれだけ。
・餃子または春巻きの皮
・ピザソースやマヨネーズ、パスタソースなどお好みの調味料
・とろけるチーズ
・ハムやコーン、缶詰など好みの具(なくても可)

具材にはハムやコーンなど定番のトッピングをはじめ、前回ご紹介した牡蠣のオイル漬けをオイルごとのせても豪華な味わいに。個人的におせちの栗きんとんとチーズ、黒胡椒という甘い物が意外に美味しい組み合わせでした。(写真右上)

作り方も簡単。餃子や春巻きの皮に薄くピザソース等を塗って細かく切った具材とチーズをのせた後、フライパンやトースターなどでパリっとするまで焼くだけ!欲張って具材を盛り過ぎて皮を破かぬように、そして焦げやすいので火加減と火傷には充分ご注意ください。

おやつにもおつまみにも合うミニピザ。ソースや具材の組み合わせは甘いものから醤油のような和風の味まで無限大です。ぜひお好みの味を探してみてくださいね。

さてピザ欲が満たされてから思うのは元日からジャンクフードから豪華な料理まで味わえるありがたさ。もともとおせち料理は三が日をゆっくり休めるように作られた保存食なので味付けは甘めかつ冷めても美味しいものがメインです。しかしそれだけでは少し物足りないですよね。熱々のピザやフライドチキン、お寿司も一緒に並ぶ華やかな食卓は、大人から子どもまでそれぞれ楽しむことができ、かつ家事のうち料理を少しひとやすみできる素晴らしい現代の食文化です。その裏で元日からピザを作り届けてくれる人の存在がいることも事実。お正月も日夜社会を支えるサービス業の皆さま、エッセンシャルワーカーの皆さま、お疲れ様でございます。

2026年も美味しく楽しく詠める一年でありますように。今年もどうぞよろしくお願いします。

佐野瑞季


【執筆者プロフィール】
佐野瑞季(さの・みずき)
1997年静岡県生まれ
雲の峰」所属 超結社句会「四季の料理帖」代表
第17回鬼貫青春俳句大賞
夢はかまくらの中でお餅を焼くこと
・E-mail:kigotabekukai@gmail.com
・X @Sano_575
・Instagram @sano_575
・四季の料理帖X @kigotabe
・四季の料理帖Instagram @shikinoryoricho



関連記事