ハイクノミカタ

水道水細し残暑の体育館 野澤みのり【季語=残暑(秋)】


水道水細し残暑の体育館

野澤みのり 


今年は、8月7日が立秋だった。まだまだ暑い日は続くが、俳句としては「残暑」ということになる。掲句は、中学や高校のころの夏休みの部活の景を思い出す。ひっそりと静まりかえった学校に谺するバスケ部のシューズの音、バレー部のレシーブの痛そうな音、体育館まで聞こえてくる野球部の金属音や無駄に大きな掛け声……きっと冷やして持ってきたペットボトルの水なんてとっくに飲み干してしまっていて、熱されてぬるい水しかでない蛇口の水を飲んでいる。学校の設備もだいぶ老朽化しているのか、「細し」とまでいったところが巧いところで、いっそうの暑さが感じられる。大学生による高校生のための俳句賞「25」より。この句は第3回の秀句(2019)。作者の当時の肩書きは「神奈川県立横浜翠嵐高等学校3年」。(堀切克洋)



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