【冬の季語】春隣

【冬の季語=晩冬(1月)】春隣

冬来たりなば春遠からじ……というのは初冬の言葉でしょうが、古くから春は待ちわびるものとされてきました。暦の上では春は「立春」(2月4日ごろ)にはじまります。

寒さが峠を越え、春が間近に迫り、さまざまな自然現象に春らしさが感じられる。そんな冬間近の感覚を「春隣」と言います。関連する季語に「春近し」「春待つ」「待春」など。

とはいえ、どこに春の訪れを感じるかは人それぞれ。なかなかに遊び甲斐のある季語のひとつ。


【春隣(上五)】
春隣る空かたぶけて牡丹雪 西島麦南
春隣こわい顔して指相撲 永滝繁男
春隣出るぞ出るぞと麦粒腫 幡谷東吾
春隣妻の臀われを顧みず 岸田稚魚
春隣旅の誘ひのあれこれと 手塚涼子
春隣島へ届きし卵の荷 西山睦
春隣額美しき子を生みて 田口茉於

【春隣(中七)】
一吹雪春の隣となりにけり 前田普羅

【春隣(下五)】
水鳥の日向を見れば春隣 高浜虚子
種揃へしておこすなり春隣 河東碧梧桐
産科とふ名札はたのし春隣 中村汀女
叱られて目をつぶる猫春隣 久保田万太郎 
車窓より瀬戸の島山春隣 星野立子
めわらべの放屁かなしき春隣 中条明
二重あごなくす体操春隣 遠藤豊成
命毛を墨のぼりくる春隣 遠野ひかり
ひと口を残すおかはり春隣 麻里伊
くうるりとなほる逆子よ春隣 吉田祥子
笑ふ子の大きな前歯春隣 津川絵理子
調律師音を探して春隣 沼田布美
くまむしになるまで眠る春隣 鎌田俊
マスクして抱き合ふ子らよ春隣 金澤諒和
白球の滞空時間春隣  神野紗希

【春隣(その他)】
はるはまだ一軒おいてとなりかな 百花


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