コンゲツノハイク【各誌の推薦句】

【読者参加型】コンゲツノハイクを読む【2022年6月分】

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【読者参加型】

コンゲツノハイクを読む

【2022年6月分】


ご好評いただいている「コンゲツノハイク」は毎月、各誌から選りすぐりの「今月の推薦句」を(ほぼ)リアルタイムで掲出しています。しかし、句を並べるだけではもったいない!ということで、一句鑑賞の募集を行っています。まだ誰にも知られていない名句を発掘してみませんか? 今回は8名の方にご投稿いただきました!(掲載は到着順です)


手話の指ひらひらひらと蝶生まる

坂口明子

「天穹」2022年6月号より

手話の動きの中に蝶がふっと現れた。私も以前、手話を習っていた事があるが、手は、相手に言葉を伝えているが、日本の地域によっても異なるし外国でも勿論、手話の形は異なる。又、手話を使ってる人の家族間だけに伝わる手話というのもある。手話を交えながらも口語が使える方は口語を交えなくては相手に失礼になる。手話の軽快な口調の中に蝶のふわりとした長閑な様子が実に上手く表現できていて、この句を読んだ側も幸せな温かい気持ちになる句である。

杉森大介/「ホトトギス」)


男雛より女雛凛々しく立ちにけり

川上弘美

「澤」2022年5月号より

「澤」ですから作者は作家の川上弘美さん。最初、米澤穂信の『遠まわりする雛』に出て来る飛騨高山の「生きびな祭」を想像しましたが、こちらは男雛役も女性が演じるみたいですのでこの句の本意に合いません。(このあたり、ジェンダー論は置いておきましょう)調べたら、京都などにもあるみたいですね。結婚式と同じで、雛祭はやはり女雛が主役。気合が入って凛々しく立つことにも納得です。

鈴木霞童/「天穹」)


カーテンのなき家に来る桜鯛

舘野まひろ

「秋草」2022年5月号より

「カーテンのなき家」とは一体どんな家か。未だカーテンを設えていない引っ越し先の家だろう。新築の家かマンションかもしれない。そこに尾頭付の「桜鯛」が来るという。いずれ田舎の親戚辺りからの引っ越し祝いか新築祝いだろう。「来し」ではないのでこれから来るのだ。おそらく事前に電話で「送っといたから」とか言って来たのだ。受取拒否する訳にもいかず、さあ大変。引っ越しの荷造りの中で俎板や出刃包丁をどこぞに仕舞ったかなど誰も覚えていない。そもそもこんなドタバタの時に誰が鯛など下すのか。

「ありがた迷惑」のお祝いに家中大騒ぎの光景が彷彿する滑稽の一句。

種谷良二/「櫟」)


初夢や亀の甲羅のひらきさう

藤色葉菜

「秋」2022年5月号より

亀の出てくる初夢はいかにもおめでたい。しかし、その甲羅がひらくというのは予想のつかない展開である。何が出てくるのかも見当がつかない。強いていうなら亀の甲羅が浦島太郎の玉手箱を思わせる。もしかするとその甲羅から煙が出てきて主体は白髪の老人にされてしまうのかもしれない。あるいはこの亀が地球外生物の乗り物である可能性もありうる。「ひらきそう」とあるためその後の展開は不明であるがそれだけに不気味である。小判でも出てきそうとは考えにくい。

光本蕃茄/「澤」)


身ごもりし白馬に桜吹雪かな

千々和恵美子

「ふよう」2022年5月号より

ただただ美しくて感動しました。

桜吹雪は身ごもったことを祝福しているのですね。しかも白馬、めでたさが重なり、希望が膨らみますね。この句を読んだ人の殆どが同じような気持ちになるのではないでしょうか。

馬へ粉雪が降り注いでいる様子を見て、きれいで静か、でも雪が降ってくる音が聞こえるようで、その世界に引き込まれたことがあります。田舎の小さな牧場、薄茶色の馬が二頭繋がれていました。雪景色と頬を刺す冷たい空気を覚えています。この景、桜吹雪とは関係がないのですが、こちらのお句の第一印象と重なってしまいました。美しさの共有ではないかしら。

フォーサー涼夏/「田」)



調律師音を探して春隣

沼田布美

「稲」2022年5月号より

掲句の「調律師」とはおそらく「ピアノ調律師」のことだろう。というのも、ピアノは構造が複雑でデリケートであるため、他の楽器と違って演奏者自身が音の調節をするのは困難で、専門の調律師が必要となるからだ。ITが進歩した現代でも、調律師は最終的には自分の耳を頼りに音の調整を行う。心地よい和音や音色を丹念に「探して」いくのだ。上五中七の措辞が「春隣」という季語と響き合い、まるで美しいハーモニーを奏でているようだ。

北杜駿/「森の座」)


もういちど生まれておいで桃の花

小笠原黒兎

「炎環」2022年5月号より

「もういちど生まれておいで」と言うのはどんな場面かを考える。ペットの犬や猫、小鳥を弔っている場面がしっくりくる。悲しみのどん底は抜けて、声をかけることができるまで気持ちを持ち直したのかと想像する。自分自身に言い聞かせているようでもある。桃の花は美しいだけでなく、どこか幻想的な花だ。しかし「桃源郷」という言葉を出すのはこの句の読みを狭めてしまうかもしれない。この句はさりげないけれど実にやさしく読者の胸に届く。素晴らしい句だと思う。

千野千佳/「蒼海」)


水底の罠に魚ゐる桜かな

延平昌弥

「南風」2022年6月号より

水中の世界と陸の世界。この句は、水の冷たさや桜の淡いピンクだけでなく、四月の空気と光の揺らぎを感じさせてくれる。水中のぽこぽことした音も。

宮沢賢治の「やまなし」を思い出した。魚は悪いことして、罠にはまってしまったのだろうか。あるいは、桜がそう仕向けたのだろうか。きっと、そこそこに大きな魚だろうに。罠を仕掛けたのはどんな人なのだろうか。春はあっという間に初夏へと移りゆき、花は葉となっていくだろう。

どんな句評も野暮となる、実にクールな句である。

松村史基/「ホトトギス」)



→「コンゲツノハイク」2022年6月分をもっと読む(画像をクリック)


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