小谷由果の「歌舞伎由縁俳句」【第9回】河竹黙阿弥の七五調と五七五

さて、先月の襲名披露では、『弁天娘女男白浪』で八代目菊五郎が「浜松屋見世先の場」の弁天小僧菊之助、そして「稲瀬川勢揃いの場」では六代目菊之助が弁天小僧菊之助を演じた。

女に化けた美人局として登場した八代目菊五郎は、さすがの風格と美しさ。正体を見破られて声音が低くなりバサバサと着物を脱いで弁天小僧に戻ってからの南郷力丸(尾上松也)との盗賊同士の掛け合いは、八代目の品格高き女方としてのイメージを大きく覆す面白さ。また「稲瀬川勢揃いの場」では、11歳の六代目菊之助の堂々たる口跡、落ち着いた眼差しに感服。襲名披露口上も、小学生とは思えぬほど安定した声で切れのよい清々しさ。玉三郎や團十郎などの共演者も大きな華を添え、富士山の祝幕は音羽屋が藝を磨き更なる高みを目指す様を象徴するようで、音羽屋の未来の明るさを確信する襲名披露であった。

今月六月の歌舞伎座も、引き続き襲名披露。今月も黙阿弥の作品である『連獅子』が菊五郎菊之助の親仔獅子で上演されるので、ぜひ見届けたい。

<参考文献>
『河竹黙阿弥』(大正3年、河竹繁俊著、演藝珍書刊行會)
『黙阿弥の手紙・日記・報條など』(昭和41年、河竹繁俊編著、演劇出版社)
『名作歌舞伎全集 第十一巻 河竹黙阿弥集 二』(昭和44年、河竹登志夫ほか監修、東京創元社)

小谷由果


【執筆者プロフィール】
小谷由果(こたに・ゆか)
1981年埼玉県生まれ。2018年第九回北斗賞準賞、2022年第六回円錐新鋭作品賞白桃賞受賞、同年第三回蒼海賞受賞。「蒼海」所属、俳人協会会員。歌舞伎句会を随時開催。

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