神保町に銀漢亭があったころ

神保町に銀漢亭があったころ【第112回】伊達浩之

彼女

伊達浩之(「銀化」同人)

「伊達ちゃん、彼女できたんだって。銀漢亭に連れてきてたでしょ」
 句会の2次会で峯尾文世さんが話しかけてきた。

「なに言ってんですか(笑)。仕事相手ですよ。彼女ができたとしても、すぐばれる店に連れて行くわけないじゃないですか」
と私。文世さんは
「そっか。そうだよね〜〜」
とうなずいた。

勤務先の週刊誌編集部から銀漢亭までは歩いて7分ほどの近さ。句会を開いてないときは、奥のテーブルでゆっくり話しができるので、ライターや写真家、新聞記者や編集者の友人、職場の同僚など、さまざまな人を連れていった。

神保町には、小学館や集英社、岩波書店など出版社が立ち並ぶが、同業他社の編集者にほとんど会わないのも、打ち合わせにはありがたかった。

よく頼んだのは、ジャンボ油揚や砂肝の黒胡椒炒め、ベーコン、茄子カレーとパンなどなど。一見派手さがないものの、逆に言えば奇をてらっていないため、しみじみと美味しい。ビールの絶妙な注ぎ方や、日本酒や焼酎のセレクトの良さもあいまって、連れて行った全員が満足してくれた。

銀漢亭の料理と言えば、湯島句会やOh!月見句会など大人数の句会に供される大皿料理や汁物も見事だったし、季節に合わせた花などの設えも味わい深かった。

2014年9月、Oh! 月見句会の店内

さて、冒頭で話題にした「彼女」が今のパートナーである。仕事の打ち合わせかデートかは雰囲気から一目瞭然のはずだが、気づいた様子をおくびにも出さず、また、口が堅い伊藤伊那男さんの人間力に感嘆している。

そして、伊那男さんには結婚披露宴の2次会にもご出席いただいた。この場をお借りしてあらためてお礼を申し上げます。ありがとうございました。


【執筆者プロフィール】
伊達浩之(だて・ひろゆき)
1964年愛媛県生まれ。2009年銀化新人賞受賞、「銀化」同人。




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