【新年の季語】歌留多

新年の季語(1月)歌留多

【ミニ解説】

歳時記には「正月、家族でかるた遊びをすることはかつては盛んであったが、近年はあまり見かけなくなった」とあるが、案外残っていたりもする。

かるた遊びは、ポルトガルから伝えられ、ポルトガル語の「カード」を意味する「carta」に由来。「加留多」「賀留多」「骨牌」などの漢字が当てられた。

百人一首に代表される「歌がるた」は、江戸初期に成立。本来は、歌をおぼえるための教育的な遊びで、《小倉百人一首》《伊勢物語》《古今集》《源氏物語》などの歌が用いられていたが、そのなかでもとくに《小倉百人一首》が普及し、今日でも愛好されている。

末次由紀によるマンガ『ちはやふる』(2008年ー2022年)は、競技かるたを題材とした青春ストーリーで映画化もされ、競技かるたの浸透にも強い影響を及ぼした。

「畳の上の格闘技」ともよばれる競技かるたは、1954年設立の「全日本かるた協会」が、1955年から男子選手の最強を決める名人戦を、1957年から女子選手の最強を決めるクイーン戦を主催しており、新年の風物詩となっている。


【歌留多(上五)】
歌留多とる皆美しく負けまじく 高浜虚子
歌留多読む声のありけり谷戸の月 松本たかし
かるた読む妻には妻のふしありぬ 下村ひろし
歌留多読む恋はをみなのいのちにて 野見山朱鳥
歌留多読む声に夕月加はれり 有馬朗人
かるた読むはじめしばらく仮の声 大牧広
かるた取る恋の行方を知ればこそ 岡野弥保

【歌留多(中七)】
賑やかな骨牌(カルタ)の裏面(うら)のさみしい繪 富沢赤黄男
一枚の歌留多の砂に埋れんと 波多野爽波
掌に歌留多の硬さ歌留多切る 後藤比奈夫
恋に恋せし頃歌留多お手付きす 折原あきの
娘らは歌留多飛ばしぬ目が寄りぬ 笠井亞子
任天堂の歌留多で倒す恋敵 中村安伸

【歌留多(下五)】
封切れば溢れんとするかるたかな 松藤夏山
恋にしてわざと敗けたるかるた哉 羅蘇山人
古風なる筥にねむれる歌留多かな 阿波野青畝
むさし野は男の闇ぞ歌留多翔ぶ 八田木枯
ひとりでにひらくことあり歌留多函 八田木枯
声といふ美しきもの歌留多読む 後藤比奈夫
まづこれやこのを覚えし子の歌留多 安原葉
前のめりしだいに深く歌留多とり 真木朝実
くろかみのうねりをひろふかるたかな 恩田侑布子
黒髪の乱れてゐたる歌留多かな 中嶋憲武
しづかなるひとのうばへる歌留多かな 野口る理


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