【夏の季語】籐椅子

【夏の季語=三夏(5月〜7月)】籐椅子

籐の茎と表皮で作った椅子のこと。足を伸ばせるタイプは「籐寝椅子」とも。

日本でも籐は古くから素材として用いられてきた。正倉院に保管されている篭や藤原時代の重藤の弓がある。俳諧では、〈月影の洩れて涼しや籠枕〉(利会「類題発句集」)のように、「籠枕」のほうが季題として古い。

籐家具は、ヨーロッパを中心に発達したものが、植民地時代のアジアに伝わり、明治初期に日本に伝わった。欧米文化が輸入されるにつれて椅子生活が普及し、籐椅子は「西京丸」とよばれてハイカラな生活スタイルとして定着した。


【籐椅子(上五)】
籐椅子にあれば草木花鳥来 高濱虚子
籐椅子や海の傾き壁をなす 山口誓子
籐椅子や読むべきものに堀辰雄 安住敦
籐椅子に時計が鳴つて濃き没日 赤尾兜子
籐椅子の家族のごとく古びけり 加藤三七子
籐椅子飴色何々婚に関係なし 鈴木榮子
籐椅子の肘の艶こそ父のもの 加古宗也
籐椅子にすぐ消えたがる主語であり 如月真菜
籐椅子に拠りしままの背広かな 村上瑠璃甫
籐椅子に坐るでもなく手を掛けて 若杉朋哉

【籐椅子(中七)】
国宝の間とは古籐椅子のあるところ 加倉井秋を
この森に籐椅子向けて老うるらし 稲垣きくの
そのあとの籐椅子海へ向きしまま 荒井千佐代

【籐椅子(下五)】
一生の疲れのどつと籐椅子に 富安風生

【ほかの季語と】
洗ひ髪かはく間月の籐椅子に 杉田久女
籐椅子を抜ける西日となりにけり 長谷川櫂



関連記事