【連載】歳時記のトリセツ(13)/関悦史さん


【リレー連載】
歳時記のトリセツ(13)/関悦史さん


このコーナーでは、現役ベテラン俳人のみなさんに、ふだん歳時記をどんなふうに使っているかを、リレー形式でおうかがいしています。好評につきもう少しだけ続けていく予定。今回は、高山れおなさんからのリレーで、「翻車魚(まんぼう)」同人の関悦史さんです。


【ここまでのリレー】村上鞆彦さん橋本善夫さん鈴木牛後さん中西亮太さん対中いずみさん岡田由季さん大石雄鬼さん池田澄子さん干場達矢さん小津夜景さん佐藤りえさん高山れおなさん→関悦史さん


──初めて買った歳時記(季寄せ)は何ですか。いつ、どこで買いましたか。

光文社編『オールシーズン版 俳句歳時記』(光文社文庫、1991年)を2001年12月11日に王子駅付近の古本屋で200円で買いました。

句作をひとりで初めて間がない時期なので、全一巻の簡素なものをたまたま見かけて買ったというものでした。

──現在、メインで使っている歳時記は何ですか。

ネットでの検索が主です。

句作のときは解説なしで季語だけ並べてあるファイルをよく使っていて、人さまの句を読む際にグーグル画像検索でよく知らない植物季語などの確認をしています。

紙の本になったものとしては平井照敏編『新歳時記』(全5巻、河出文庫、1996年)で、解説や例句が見たい場合はこちらを使っています。

「沈丁花」画像検索画面(関さん提供)

──歳時記はどのように使い分けていますか。

上記の通り。

──句会の現場では、どのように歳時記を使いますか。なるべく具体的に教えてください。

句会に出ることがほぼありません。

──どの歳時記にも載っていないけれど、ぜひこの句は収録してほしいという句があれば、教えてください。大昔の句でも最近の句でも結構です。

どれにも載っていないかどうかの確認が大変なので最近の句集から。

野晒しの電池のごとき秋思かな   魚住陽子[鳥居真里子編]『透きとほるわたし』

──自分だけの歳時記の楽しみ方やこだわりがあれば、教えていただけますか。

BL俳句の連載を持っていた頃にBL的に擬人化できる季語を探していました。

──自分が感じている歳時記への疑問や問題点があれば、教えてください。

強いて挙げれば、季語とその内容を完璧に網羅することは難しいのに、受容するときこちらが教条的になりやすいところでしょうか。

──歳時記に載っていない新しい季語は、どのような基準で容認されていますか。ご自分で積極的に作られることはありますか。

もともと無季俳句から作り始めたので特に「容認」もしません。

──そろそろ季語として歳時記に収録されてもよいと思っている季語があれば、理由とともに教えてください。

愛想がなくて申し訳ないのですが特に思いつきません。

──逆に歳時記に載ってはいるけれど、時代に合っていないと思われる季語、あるいは季節分類を再考すべきだと思われる季語があれば、教えてください。

時代に合わなくなった季語(実生活で見かけなくなった「炭」の類)はむしろ残してほしいです。

──季語について勉強になるオススメの本があったら教えてください。

永田耕衣『山林的人間』

いま本が探し出せないので耕衣の本の抄出から成る鳴戸奈菜編著『田荷軒狼箴集』(湯川書房、1996年)から引きますが、以下のようなことが書かれています。

《今日、定型のことはしばらくおいて、季語の霊的受容がいたく展開されてゆかねばならぬと信じている。季語を季語に執着して受用するとともに、それゆえにこそ、無季語(超季語)を季語的に創造しうる自由と、無季語(超季語)を歓迎する方向を示したい》(『山林的人間』)

──最後の質問です。無人島に一冊だけ歳時記をもっていくなら、何を持っていきますか。

持っていきません。

もともと季語は自然より社交に属するものと思うので、無人島ではさして意味がない気がします。

──以上の質問を聞いてみたい俳人の方がもしいれば、ご紹介いただけますか。テレフォンショッキング形式で…

四ッ谷龍さん。

──それでは次回は、四ッ谷龍さんにお願いしたいと思います。本日はご協力いただき、ありがとうございました。


【今回、ご協力いただいた俳人は……】
関悦史(せき・えつし)さん
1969年茨城県生まれ。「豈」「クプラス」を経て佐藤文香と「翻車魚」創刊。
句集『六十億本の回転する曲がつた棒』(邑書林)、『花咲く機械状独身者たちの活作り』(港の人)。評論集『俳句という他界』(邑書林)。芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞、攝津幸彦記念賞、俳句界評論賞、田中裕明賞受賞。



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