歳時記のトリセツ

【連載】歳時記のトリセツ(7)/大石雄鬼さん


【リレー連載】
歳時記のトリセツ(7)/大石雄鬼さん


今年2022年、圧倒的な季語数・例句数を誇る俳句歳時記の最高峰『新版 角川俳句大歳時記』が15年ぶりの大改訂! そんなわけで、このコーナーでは、現役ベテラン俳人のみなさんに、ふだん歳時記をどんなふうに使っているかを、おうかがいしちゃます。歳時記を使うときの心がけ、注意点、あるいは歳時記に対する注文や提言などなど……前回の岡田由季さんからのリレーで、第7回は「陸」編集長の大石雄鬼さんです!

【ここまでのリレー】村上鞆彦さん橋本善夫さん鈴木牛後さん中西亮太さん対中いずみさん岡田由季さん→大石雄鬼さん


――初めて買った歳時記(季寄せ)は何ですか。いつ、どこで買いましたか。

俳句を始めた頃なので、30数年前になります。角川書店の「入門歳時記」を購入しました。四季全てが入っていても厚くなく、特に例句にも全て仮名が振ってあったので、重宝しました。最初は漢字がなかなか読めないので初心者には良いと思います。すっと俳句に入ることができました。

『入門歳時記』(1980年)

――現在、メインで使っている歳時記は何ですか。

次に購入したのは「合本俳句歳時記 新版」(角川書店)です。これは約30年間使用しています。表紙も背表紙も取れぼろぼろですが、「最初に見たものが親」のように感じられ、落ち着いて俳句が作れます。ただ、どんどん壊れていくので、現在は「合本俳句歳時記 第三版」角川ソフィア文庫の「俳句歳時記」を季節ごとに使用しています。季語の該当月を知りたい場合は、「現代歳時記」(成星出版)を見ることもあります。

あとは、各種歳時記収録の電子辞書ですね。

『現代歳時記』(1997年)

――結構たくさん使われていますね。使い分けはどのようにされていますか。

俳句を作るときは紙の歳時記。外出先で調べる場合は電子辞書です。

――句会の現場では、どのように歳時記を使いますか。具体的に教えてください。

句会では、確認用として電子辞書を使用します。ほとんどの季語が頭に入っているはずなのですが、歳のせいか分からなくなっている場合があります。また、句会出席者の話を聞き、あらためて解説を読んでみて、間違えて覚えていた季語を発見することもしばしばです。

――どの歳時記にも載っていないけれど、ぜひこの句は収録してほしいという句があれば、教えてください。大昔の句でも最近の句でも結構です。

ずばり「私の俳句」です。話は違いますが、俳句を始めた頃、俳句カレンダーに載っていた「まばたきを忘れ雪夜のバレリーナ」(漢字・かなは違うかもしれません)が、誰の俳句なのか今だにわからず、気になっています。

――自分だけの歳時記の楽しみ方やこだわりがあれば、教えていただけますか。

歳時記の例句を読み、作句の気分を高めています。普段見なれた紙の歳時記の方が、集中力が高まるような気がします。

――自分が感じている歳時記への疑問や問題点があれば、教えてください。

岡田さんも指摘していますが、鳥の季があやしいと思っています。角川の歳時記では目白、四十雀類が夏。合本歳時記の解説を読むと目白は「目白押しになって並ぶ」とあり(その行動は秋、冬)、椿に来てその蜜を好んで吸う(ならば春)としながら夏。四十雀は四月から七月の繁殖期にツーツーピーと鳴く(ならば春)、秋冬期は小群で行動する(ならば秋)としながら夏。角川以外は秋のようです。目白を春としていたものも見た記憶があります。

――歳時記に載っていない新しい季語は、どのような基準で容認されていますか。ご自分で積極的に作られることはありますか。

歳時記に載っているかどうかは、あまり気にしません。ある程度季感があり、熟している語であれば気にせず使っています。造語的なものは作っていません。普段使っている言葉のみです。今では歳時記に載っていますが、「熱帯夜」とか「花粉症」は歳時記にまだ載っていないときから季語として使っていました。

――そろそろ季語として歳時記に収録されてもよいと思っている季語があれば、理由とともに教えてください。

生活に密着した「ホワイトデー」とか「ハロウィン」とか、載ってもよいように思います。

大石さんの本棚より(ご本人提供)

――逆に歳時記に載ってはいるけれど、時代に合っていないと思われる季語、あるいは季節分類を再考すべきだと思われる季語があれば、教えてください。

さすがに「冷蔵庫」は必要かな? 俳句をしていない人に「冷蔵庫」は夏の季語と言うと、はっ?となります。「七夕」「花火」「朝顔」「西瓜」などを秋とすることは、歳時記に洗脳されて今では違和感がありませんが、子どもの頃から夏のイメージが強いこれらの季語は、ふとおかしいと感じることもあります。

――季語について勉強になるオススメの本があったら、理由とともに教えてください。

季語については、歳時記が一番かなと思います。

――最後の質問です。無人島に一冊だけ歳時記をもっていくなら、何を持っていきますか。

当初から長く使っている親のような「合本俳句歳時記 新版」(角川書店)でしょうか。ぼろぼろだけど。

――以上の質問を聞いてみたい俳人の方がもしいれば、ご紹介いただけますか。テレフォンショッキング形式で…

最近、講座の講師をしていただいた池田澄子さん(先生と言ったら怒られます)にお願いしたいと思います。歳時記なんか気にしていないイメージがあるのですが、どうなのでしょうか。興味津々です。

――お忙しいなか、ご協力ありがとうございました。それでは次回は、池田澄子さんにお願いしたいと思います。お楽しみにお待ちください。


【今回、ご協力いただいた俳人は……】
大石雄鬼さん(おおいし・ゆうき)さん
1958年生まれ。中村和弘主宰「陸」編集長。1996年現代俳句協会新人賞。2012年陸賞。句集『だぶだぶの服』(ふらんす堂、2012年)



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