【春の季語】茅花

【春の季語=晩春(4月)】茅花

「茅萱」(チガヤ)の花のこと。

イネ科の多年草で、田畑、川原、土手など日当たりがいい場所に群生している。晩春から初夏にかけて、30センチ~50センチに生長し、子猫の尻尾のような細長い花穂を伸ばす。

古代の日本では、チガヤの野原は大和の原風景で、古名はチ(茅)であり、花穂はチバナまたはツバナとも呼ばれ、万葉集には〈茅花抜く浅茅が原のつぼすみれ今盛りなり吾が恋ふらくは〉と詠われている。

小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1806年)には、若い穂をツバナ(茅花)といい、甘みがあり、子どもが食べると記載されている。

「茅花流し」は、茅花の花穂を吹き渡る南風のことで、初夏の季語となる。


【茅花(上五)】
茅花野や犬やはらかくうづくまり 山田みづえ
茅花野に兎の如く君待つも 小池文子
茅花さわいでさわいでさわいで汽車が来る 夏井いつき

【茅花(中七)】
口中の茅花を我に見するかな 大岡頌司
男から死ねと茅花の野に笑う 寺井谷子

【茅花(下五)】
おそろしき迄穂に出る茅花かな 正岡子規


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