冬の季語

【冬の季語】嚏(嚔)

【冬の季語=三冬(11月〜1月)】嚏(嚔)

鼻腔内や口腔内から体内に侵入しようとする異物やウィルスを空気と一緒に吹き飛ばして排出しようとする、生体の防御反応のひとつ。「風邪」の一症状として、冬の季語となっている。

中年以上の男性が周囲を脅かすほどの大きさでくしゃみをするのは、抑えるための筋力が衰えてきて、かつ恥じらうという気持ちが低下するから、といわれている。

「嚏」という字は「くさめ」「くしゃみ」と読むほか、「はなひり」という言い方もある。


【嚔(上五)】
くさめして我はふたりに分れけり 阿部青鞋
嚏して東京駅をおどろかす 乾鉄片子
くさめせり生れて一日目の嚏 辻田克巳
嚔して酒のあらかたこぼれたる 岸本葉子
嚏して笑ふ子どもと二人きり 田口茉於
くしやみしてぷるんと魚に戻りけり 成田一子
くしゃみしてポラリス逃す銀河売り 市川桜子

【嚔(中七)】
つづけさまに嚔して威儀くづれけり 高濱虚子
数へられゐたるくつさめ三つまで 伊藤白潮
宇宙にも人ゐて嚔立て続け 今瀬剛一
保育器の中でくさめをしてをりぬ 抜井諒一
おじさんのくしゃみに滅ぶ星一つ 酒井おかわり

【嚔(下五)】
哲学も科学も寒き嚔哉 寺田寅彦
美しき眼をとりもどす嚏の後 小川双々子
現身の暈顕れしくさめかな 真鍋呉夫
許されてゐる昼酒の大くさめ 榎本好宏
汁の椀はなさずおほき嚔なる 中原道夫
ゲルニカの牛の貌めく嚔まへ 成田一子

【その他の季語と】
水鼻にくさめなりけり菊紅葉 宝井其角
くさめして見失ふたる雲雀哉 横井也有
風花は千万くさめ一つ出づ 堀口星眠
炉話の鼻をこそぐる嚏かな 阿波野青畝
炎天の馬くさめせり瓦斯行きて 田川飛旅子
山に向きくさめ一つの冬谺 村越化石


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