冬の季語

【冬の季語】ストーブ

【冬の季語=初冬〜晩冬(11〜1月)】ストーブ

【ミニ解説】

冬の暖房器具はさまざまあり、それぞれに歴史があり、情感が異なります。現代ではストーブよりも「暖房」や「懐炉」のほうが身近でしょう。

日本では江戸時代からストーブが使われるようになりました。明治から外国製ストーブ、またその模倣品が広まります。このころは薪・石炭を燃料としており、明治後期にはガスストーブ、明治末期には電気ストーブが発明されますが、なかなか普及しなかったようです。そもそもストーブ自体が風通しのよい日本の住宅構造にはなじまず、住宅そのものが洋風化する戦後までは主要な暖房器具になりませんでした。

なお、「ダルマストーブ」と呼ばれる球形のストーブがあります。いまでは使用される場所は限られていますが、一九七〇年代ごろまで駅の待合室や客車内、学校などに置かれていました。


【ストーブ(上五)】
ストーブや黒奴給仕の銭ボタン 芝不器男
ストーヴや患者につづる非常の語 相馬遷子
ストーブを焚くやモデルを待ちながら 松本秀一
ストーブに判をもらひに来て待てる 粟津松彩子 
ストーブに貌が崩れていくやうな 岩淵喜代子
ストーブに手を揉み知らぬ者同士 村上鞆彦
ストーブに惑星たちの椅子が無い 赤羽根めぐみ

【ストーブ(中七)】
百合生けてストーブを焚く寒さかな 高浜虚子
患者の前灼けストーブに投炭す 野沢節子
母の訃報ダルマストーブ赤く脹れ 椎橋清翠
風の声火の声ストーブ列車発つ 成田千空
快晴に焚くストーブや峠茶屋 今瀬一博

【ストーブ(下五)】
頬杖を解いて一とくべストーブへ 森信乾
朗読は反戦の詩ストーブ燃ゆ 出口民子


  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 【冬の季語】返り花(帰り花)
  2. 【秋の季語】迎鐘/六道参 精霊迎
  3. 【春の季語】沈丁花
  4. 【夏の季語】海の日
  5. 【冬の季語】日短
  6. 【夏の季語】飛魚/とびを つばめ魚 あご
  7. 【春の季語】啓蟄
  8. 【秋の季語】秋の風

おすすめ記事

  1. 【夏の季語】白玉
  2. 【春の季語】野に遊ぶ
  3. とび・からす息合わせ鳴く小六月 城取信平【季語=小六月(冬)】
  4. 【春の季語】日永
  5. 【アンケート】東日本大震災から10年目を迎えて
  6. 【結社推薦句】コンゲツノハイク【2023年4月分】
  7. 筍の光放つてむかれけり 渡辺水巴【季語=筍(夏)】
  8. 神保町に銀漢亭があったころ【第74回】木暮陶句郎
  9. 【春の季語】葱坊主
  10. 武具飾る海をへだてて離れ住み 加藤耕子【季語=武具飾る(夏)】

Pickup記事

  1. 【#44】写真の不思議
  2. 【夏の季語】夏の果/夏果つ 夏終る 夏行く 行夏 夏逝く 夏惜しむ
  3. 【連載】俳人のホンダナ!#4 西生ゆかり
  4. 雲の中瀧かゞやきて音もなし 山口青邨【季語=瀧(夏)】
  5. 嚙み合はぬ鞄のチャック鳥曇 山田牧【季語=鳥曇(春)】
  6. 呼吸するごとく雪降るヘルシンキ 細谷喨々【季語=雪(冬)】
  7. 秋草の揺れの移れる体かな 涼野海音【季語=秋草(秋)】
  8. 夾竹桃くらくなるまで語りけり 赤星水竹居【季語=夾竹桃(夏)】
  9. 利根川のふるきみなとの蓮かな 水原秋櫻子【季語=蓮(夏)】
  10. 【新連載】「野崎海芋のたべる歳時記」 パン・デピス
PAGE TOP