季語・歳時記

【春の季語】針供養

【春の季語=初春(2月)】針供養

使えなくなった縫い針を供養し、近くの神社に納める行事のこと。豆腐やこんにゃくに針を刺して供養する。各地の社寺で行われている。12月8日、または2月8日に行われるため、歳時記によっては冬の季語とすることもある。

かつては12月8日が一年の生業(特に農事)に区切りをつけて、新年に訪れる年神様を迎えるための準備を始める日、一方の2月8日は、年神様を天にお帰しして、全ての正月行事を終える「事納めの日」であった。いまふうにいえば、長期休暇(民俗学的にいえばハレ)が終わって、日常生活(ケ)がはじまるのが2月8日であった。

江戸時代後期から明治時代に拡がった、比較的あたらしい行事である。

針納」ともよぶ。


【針供養(上五)】
針供養といふことをしてそと遊ぶ 後藤夜半

【針供養(中七)】
いつしかに失せゆく針の供養かな 松本たかし

【針供養(下五)】
天井に日の斑ゆらめく針供養 桂信子
白杖の立てかけてある針供養 鈴木節子
持ち寄れる生計のにほひ針供養 真板道夫
針といふ光ひしめき針供養 行方克巳
並べ売る厚手の下着針供養 小山蓮子
髪結うて目のつり上がる針供養 黒澤麻生子

【ほかの季語と】
山坂の靄おそろしき針供養 大牧広
雨もよひとも雪もよひとも針供養 松尾隆信


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】



  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 【冬の季語】クリスマス
  2. 【春の季語】春塵
  3. 【冬の季語】冬野
  4. 【春の季語】蛇穴を出づ
  5. 【冬の季語】水仙
  6. 【春の季語】猫の子
  7. 【秋の季語】秋暑し
  8. 【冬の季語】春近し

おすすめ記事

  1. 蜩や久しぶりなる井の頭      柏崎夢香【季語=蜩(秋)】
  2. 或るときのたつた一つの干葡萄 阿部青鞋
  3. 春を待つこころに鳥がゐて動く 八田木枯【季語=春を待つ(冬)】
  4. 秋櫻子の足あと【第7回】谷岡健彦
  5. 若き日の映画も見たりして二日 大牧広【季語=二日(新年)】
  6. 神保町に銀漢亭があったころ【第57回】卓田謙一
  7. 日本の元気なころの水着かな 安里琉太【季語=水着(夏)】
  8. 【結社推薦句】コンゲツノハイク【2024年2月分】
  9. 秋鰺の青流すほど水をかけ 長谷川秋子【季語=秋鰺 (秋)】
  10. 魚のかげ魚にそひゆく秋ざくら 山越文夫【季語=コスモス(秋)】

Pickup記事

  1. 肩につく影こそばゆし浜日傘 仙田洋子【季語=浜日傘(夏)】
  2. 求婚の返事来る日をヨット馳す 池田幸利【季語=ヨット(夏)】
  3. 天体のみなしづかなる草いきれ 生駒大祐【季語=草いきれ(夏)】
  4. 橡の実のつぶて颪や豊前坊 杉田久女【季語=橡の実(秋)】
  5. 呪ふ人は好きな人なり紅芙蓉 長谷川かな女【季語=芙蓉(秋)】
  6. 【結社推薦句】コンゲツノハイク【2022年1月分】
  7. 白い部屋メロンのありてその匂ひ 上田信治【季語=メロン(夏)】
  8. 恋人はめんどうな人さくらんぼ 畑耕一【季語=さくらんぼ(夏)】
  9. 草餅や不参遅参に会つぶれ 富永眉月【季語=草餅(春)】
  10. あひふれしさみだれ傘の重かりし 中村汀女【季語=五月雨(夏)】
PAGE TOP