【連載】きょうのパン句。【#3】高円寺FLAT(高円寺)

【#3】
高円寺FLAT
(高円寺)

「ストレス発散は何ですか?」

と聞かれることがあるんですが、「パン」と即答ですね。

パンは、ストレス発散にも効能があります。ツムラの漢方くらい効きます。

というわけで、最近うれしくない夢を見ることがあったので、よい夢を見るために、パン食べ放題のランチに行ってきました。

「パンとビストロ」こと、高円寺FLATです。

駅から歩いてすぐ、JRの高架下にあるんですが、少し薄暗い扉をくぐると、そこはパンのいい香りが。入って左手がパン屋さん、右手がイートイン(「ビストロ」!)になってます。

高円寺FLATは、ランチでは+450円(税別)で、夕方以降は+580円(税別)のチャージとして「おかわり自由のパンの盛り合わせ」をいただくことができます(2024年11月時点)。これが、いまのランチメニュー。

平日のお昼どきは、小さなこどもも楽しめますねー。サラダランチもボリューム満点でオススメすが、この日は「名物!デリカ盛りプレート」を注文しました。サラダ、キャロットラペ、生ハム、ポテサラ、バゲット、キッシュなどなど。この日はたいそう飢えておりまして、帰ってきてみたら写真下手でした。すいません。

ある日のデリカ盛り。どーん。

ほかのメニューもそうですが、パンはすでにプレートにインしております。これだけでもパンを十分堪能できるのですが、十二分(死語かも)に堪能したいわたくし発酵、この日はとにかく飢えていたものでして(二度目)、迷うことなく「おかわり自由のパンの盛り合わせ」も注文。わーい。

まずは第一クール。これはプレートが運び込まれる前に、運び込まれてきました。トーストと、きのこピザと、ベリーのパイだったかな。

まずは「お通し」のような第一クール

とにかくパンの種類が豊富! しかもいろいろなバリエーションで出てくるのが、この店のよいところ。「あなたはどれがお好みですか?」と、問いかけられているような感じです。南十二国さんの句集『日々未来』のなかに、〈短日の詰め放題にむらがる手〉という句があるんですけど、冬の日差しを惜しむように、わたしはパンを食べつづけます。

プレートが到着するころには、言わずもがな、パンはなくなっています。そして自分の方向性が定まっています。おかわりお願いします。

主食多めの第2クール。

当然こうなりますよね。運ばれてくるラインナップが毎回違うので(いろいろなパンが盛られた中から選んでよそってもらう素晴らしいシステム)、本当に楽しい。生きててよかった。パンの美味しい国でよかった。しらすのピザがあってよかった。そしてホットドッグもちょうどよい大きさに切られていてよかった。けどソーセージはけっこうお腹にくるぜ!

村越敦さんに〈秋晴の港とホットドッグかな〉という句があるようなのですが、この無責任な「と」という助詞のあいだに、どうしても「船」と「ホットドッグ」の類似関係を見出してしまう、わたくし。ホットドッグという単純な食べ物には、よく晴れた日が似合う。この日もよい冬日和でした。

ちなみに、丸いパンは何だかわからなかったので、何かきいてみると、店員さんは天上の存在かと思うほど穏やかに、「これは、丸いパンですね!」と想定外の答え! いいでしょう、高円寺。

まだまだいける?第3クール。

じゃがいもチーズのパン、ミートパイ、とここで選ばれしパンたちは、同じ主食でも違うわけですよ。いい句集って読み飽きないですよね。いいパン屋は食べ飽きないのですね。ここでわたくし、斉藤志歩さんの〈枯芝にパイこぼるるにまかせたり〉という句を思い出しました(『水と茶』所収)。枯芝だったらこぼしてもいいんだ。パイも枯芝もはかなく消えていくんだ。そしてこの幸せな時間も…

とはいえ、わたしもこれから中野の友人の自宅にて餃子パーティを控えている身。

ぶっちゃけ、これ以上は限界です…

と思いきや!!

実はデザート付の盛り合わせ。

ここで、こうくるわけですよ。こうくるかなあ、ふつう。くるんですよね。それが人生。

もうこの段になると、もはや宗教とも呼びうるトランス状態に近づいているので、控えめにチョコレートのパイと、ストロベリーチョコだったかな?のドーナッツ。ストレスはどこかに吹っ飛びました。もはや口の周りは、お砂糖とチョコでべったべたです。でも大人だって、たまには口の周りを汚したい。恋人の接吻ではなく、お砂糖とチョコで。

こんなパンで満たされた日の一句は、こんな句ですかね。

冬の日の口のまはりにチョコレート  発酵

下手の横好きの俳句ですから、どうぞ受け流してください。句はいろいろと読むのですが、自分の句のよしあしはいまひとつわかりません。春、夏、秋よりは「冬」の感じなのかなとは思います。どうですかね。さすがに、そのまんますぎるかな。

そんなわけでまた次回も、つれづれなるままに。

おまけ。デリも充実してました。近くの人はいってみてね。


店名 パンとビストロ 高円寺FLAT
住所 〒166-0003 東京都杉並区高円寺南3-70-1
TEL 050-5600-6412
営業時間 月・火・水・木・金 09:00 – 23:30 L.O. 料理22:30 ドリンク23:00
     土・日・祝日 08:30 – 23:30 L.O. 料理22:30 ドリンク23:00
Instagram https://www.instagram.com/kouenjiflat/


【執筆者プロフィール】
吉田発酵(よしだ・はっこう)
1983年生まれ。世田谷区在住。パンと俳句と日本酒をこよなく愛する。
好きなパンクは、ラモーンズ 『End of the Century』。


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