スパイスを利かせ過ぎたる聖夜かな 金子敦【季語=聖夜(冬)】

スパイスを利かせ過ぎたる聖夜かな

金子敦

クリスマスのご馳走にはスパイスが欠かせない。ローストビーフのソースやローストチキンの詰め物といったメインディッシュから、ホットワインやシュトレン、ジンジャーブレッドのような甘いものにまでほんのりスパイスが香ってくる。普段はあまりスパイスを使わない人も、クリスマスのおうちディナーではオレガノやバジル、ローリエなどを張り切って揃える人もいるのではないか。日本の食卓にもねぎや紫蘇、山椒のようなスパイスはあるが、そちらは「薬味」といった印象が強く、聖夜におけるスパイスは非日常かつオシャレな「ハレ」の香りとも言えるだろう。

さて掲句の中七には「利かせ過ぎたる」とある。ピリッとスパイスの利いた料理はビールも進むご馳走の味がする。ただし利かせ過ぎると異国情緒漂う本場の味や香りとは引き換えに、小さい子どもや高齢の祖父母がいる食卓には少々出しづらいものとなってしまう。そんなひと皿が出てくる聖夜の食卓からは一人暮らし一年目の若者の姿や、子育てや介護がひと段落してようやくスパイスを利かせ過ぎた料理を堪能できる辛いもの好きな女性の姿などが浮かんできた。なんとなく大人数の賑やかな食卓というよりは一人、多くても二人の静かな聖夜の晩餐という雰囲気だ。しかし「クリぼっち」といった言葉で喩えられる寂しさ以上に、嗜好性の強いスパイスを思いっきり味わえる開放感の方が強く印象に残る。マイルドな味付けの食卓だった頃も心を温める大切な思い出として取っておきつつ、スパイスでカッと身体を温めて年越しへの活力を得るようなクリスマスディナーだってあってもいいじゃない。誰にも気兼ねせずスパイスを利いた料理にかぶりつけるのだって贅沢なことだから。

一人で気ままに過ごすことも肯定してくれる聖夜の温かさを感じられる一句。皆さま素敵な聖夜をお過ごし下さい!

(金子敦 第七句集「ポケットの底」より)

さてクリスマスの今日は、聖夜の食卓をおしゃれに、時にジャンクに彩るスパイスの句をご紹介しました。スパイスの利いた料理はお酒も進むし美味しいですよね!ただ自宅で作るクリスマスディナーでは意外と余りがち。ねぎや紫蘇と違って「どう使おう…」と迷ったことはありませんか?今回は年越しまでに余分なものは使い切りたいという方におすすめなスパイスを使った牡蠣のオイル漬けをご紹介します。先週までお腹に優しい料理と共に鑑賞をしてきましたが、クリスマスの今日はちょっと背徳的なひと皿もいかがでしょうか?

用意するものは
・清潔な瓶
・加熱用の牡蠣(500g)
・オイスターソース(大さじ1)
・オリーブオイル(適量)
・スパイス(適量)
・塩(下処理用)

スパイスはにんにくや唐辛子、ローリエのほか粒胡椒やローズマリー、コリアンダーなどお好みのものをご用意ください。材料は作りやすい目安なので、これより少ない分量でも大丈夫。

辛いものが苦手な方や小さなお子さまがいるご家庭では、にんにく1かけのみ加えるほかはご自由に調節してくださいね。

まず下準備として、瓶を煮沸消毒した後で清潔な布巾で拭いて保存容器を作ります。次に牡蠣を軽く塩で揉んだ後水で洗い、キッチンペーパーなどで余分な水分を切る。

牡蠣の下処理が済んだらフライパンにオリーブオイルを入れて熱し、牡蠣を強火で水分がなくなるまでしっかり炒めてください。牡蠣の周りの水分が減ってきたらオイスターソースを加え、焦がさぬように煮詰めたら別皿に移して粗熱を取ります。

牡蠣が冷めたらスパイスと共に清潔な保存容器に移し、仕上げに牡蠣が浸るまでオリーブオイルを注いで完成です。冷蔵庫での保存をお願いします。

食べごろは2日後〜1週間後とすぐに食べられないのが残念ですが、今から作ればお正月には間に合います。おせちに飽きてきた頃の楽しみとしていかがでしょうか?

食べ方としてはそのまま食べるほか、アヒージョや牡蠣のオイルパスタ、ドレッシングなど旨味もたっぷり溶け出した油も一緒に味わってみてくださいね!

早いものでこの連載も折り返しを迎え、今年最後の更新となりました。夜までお仕事の方、昨晩サンタ役となった大人の皆さまお疲れ様でございます。そして明日からは年越しの用意が始まりますね。

仕事納めや大掃除、諸々の〆切との格闘など大忙しな年末最後の一週間が始まりますが、美味しいものを食べて乗り越えましょう!

それでは皆さまよいお年を〜!

佐野瑞季


【執筆者プロフィール】
佐野瑞季(さの・みずき)
1997年静岡県生まれ
雲の峰」所属 超結社句会「四季の料理帖」代表
第17回鬼貫青春俳句大賞
夢はかまくらの中でお餅を焼くこと
・E-mail:kigotabekukai@gmail.com
・X @Sano_575
・Instagram @sano_575
・四季の料理帖X @kigotabe
・四季の料理帖Instagram @shikinoryoricho



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