【第7回】 有馬朗人の新年詠

【第7回】
 有馬朗人の新年詠


正月気分も抜けてきましたが、今週もお正月の俳句をとりあげたい。せっかくの執筆機会をいただいたので、師である有馬朗人の句を紹介したい。

 あかねさす近江の国の飾臼 有馬朗人

 掲句は有馬朗人第三句集「天為」の巻頭句であり、昭和55年 近江長浜での作とある。海外詠で評価を得ていたなかで、日本回帰の代表的な一句とされている。掲句は日本の正月を詠んだ堂々たる句であり、この句格の大きさは朗人の俳句の特徴だと思う。細かな写生や気づきというより、日本の正月とは?日本とは?といった問いに対して、根源的な答えを探求していたからこそ見出された句であるように感じた。テクニカルな部分の解説も野暮ではあるが、ひらがな五文字で書かれた枕詞でもある「あかねさす」は万葉集の額田王が近江で詠んだ「あかねさす紫野ゆき標野ゆき」を想起させるとともに、「あかねさす」は日に対応するということで、初日の茜色が差し込む大きな風景を自然と感じさせる。対して、下七に飾臼を体言止めで切って置くことで、近江国の大景との対比のなかで、飾臼のどっしりとした安定感が感じられ、更に日本という歴史ある国の美に対する信頼感までをも感じさせる効果があるといえる。このように解説してみると複雑な技巧が用いられている句であるが、一読して技巧的、説明的と感じることはなく自然に感じられるところに、若手俳人から脱皮した俳人としての円熟があるように思う。

(庄田ひろふみ)


【執筆者プロフィール】
庄田 ひろふみ(しょうだ・ひろふみ)
昭和51年生、平成11年より天為同人
令和7年 一句集「聖河」上梓



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