
【秋の季語(晩秋=10月)】とろろ汁
「とろろ」に出し汁を加えたもの。『日葡辞書』(1603)にも見られるように、江戸時代以前から親しまれていた食べ方。現在の静岡県丸子(鞠子)が有名で、歌川広重の東海道錦絵シリーズには、鞠子の宿にとろろ汁の看板を掛けた店が、何軒も並んでいる光景を描いたものなどもよく知られている。江戸中期の俳諧集『猿蓑(さるみの)』(1691)にある「梅若菜まりこの宿のとろろ汁」の芭蕉の句で、とろろ汁が名物になったといわれている。

【とろろ汁(上五)】
とろろ汁吾に齢の高さなし 山口誓子
とろろ汁大きく動く喉仏 加藤友子
とろろ汁女々しき男ふりきつて 山下きさ
【とろろ汁(中七)】
【とろろ汁(下五)】
故郷の山河まぼろしとろろ汁 村越化石
物分りよすぎて弱気とろろ汁 中村苑子
生きてゐることの不思議やとろろ汁 永井友次郎
赤松の二階の景やとろろ汁 宇佐美魚目
良く知らぬ己の素顔とろろ汁 河内文雄
主婦の座は楽しきものよとろろ汁 望月かほる