【連載】ハイクノスガタ【第5回】なぜ私は、手書きで俳句をつくるのか(後藤麻衣子)


【第5回】
なぜ私は、手書きで俳句をつくるのか

後藤麻衣子


スマホやパソコンに触らない日は、いまやほとんどありません。
日々、さまざまな情報をデジタルでやりとりし、文章も画面に向かって打ち込むのが当たり前になりました。
今この文ももちろん、パソコンの画面に向かって、キーボードをカタカタと打ち込んで綴っています。

ところが私は、「パソコンやスマホで文字を打ち込んで俳句をつくる」ことができません。
日々コピーライターとして何千字、何万字の原稿を書くときは、もちろんパソコンを使いますが、なぜか俳句だけは、文字を「打ち込んで」つくることができず、ノートなどの紙に文字を「書いて」つくっています。

その理由は自分でもよくわかっていないのですが、先日ふと思い知らされる出来事がありました。
吟行で訪れた長良川鵜飼で、開始まで時間があったので急遽「船上句会をしよう!」という流れになり、鵜飼観覧船上で夏雲システムの句会が立ち上がりました。
「夜だし、船の上だし」と油断して、ノートを持ってきていない。大ピンチ……!
スマホひとつで、10分ほどでつくった俳句は、自分で見返すのも恥ずかしくなるようなクオリティでした(一緒に句会した句友には、今すぐ忘れてほしい)。

いきなり話が逸れましたが、なぜ私は、俳句を「打てない」のか。
今回はその問いを軸に、「文字として書く俳句」、俳句と書字の関係を、少し掘り下げてみたいと思います。

150人のアンケートで見えた「紙とデジタル」の実態

過去に、私が運営する俳句の文具ブランド「句具」で、俳句の作句や作品管理に関するアンケートを実施しました。


年齢も句歴もさまざまな、156人の方に答えていただきました。

俳句の書きかた、つくりかたは、人それぞれ異なり、数値化するのは難しいのは大前提ですが、このアンケートは商品開発を目的としていたこともあり、あえて作句の工程を【俳句の種を集める】→【俳句をつくる】→【推敲する】の3つに分け、それぞれの場面で紙の道具とデジタルツールのどちらを使っているかを聞いてみました。

【俳句の種集め】は、外出先でメモを取るという人が多く、スマホ使用率が高い結果に。
私も、外出先ではスマホにメモをすることが多いので、この傾向には大きく頷けます。

続いて【俳句をつくる】【推敲する】フェーズ。

種集めに比べると、「ノート類」派が数字を伸ばしましたが、それでも「スマホ」派には届きません。

推敲については、「パソコン」派の人が少し増えました。

SNSで協力を呼びかけたアンケートだったため、デジタルに慣れている層がそもそも多いことも影響していると思いますが、それでもデジタル派の強さを改めて感じたアンケートになりました。

(約3年前に実施したものであり、現在はさらに変化している可能性もあります)

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