【夏の季語=初夏/仲夏(5-6月)】渓蓀(あやめ)
山野に生える多年草で紫色の花を咲かせる。
アヤメは文目(あやめ)の意味で3枚の垂れ下がった花びらの基の部分に綾になった目があることから名づけられたそう。
「渓蓀(あやめ)」だけでも季語とされるが、定型の収まりから「花あやめ」と詠まれることもある。
一般に「あやめ祭」などで鑑賞されるのは水生でカラーバリエーションのある「花菖蒲」のほうである。
和歌にも詠まれる「杜若(かきつばた)」とも似ているが、杜若には網目がない。
【渓蓀(上五)】
あやめ色とはこの色と咲きゐたり 鷹羽狩行
【渓蓀(中七)】
葛飾は花あやめ時日筋ふむ 細見綾子
空井戸をのぞき渓蓀となつてゐる 八田木枯
【渓蓀(下五)】
鳥辺山ほどにぬれゐるあやめかな 柿本多映
死後のことそれとなく言ふ花あやめ 岡本差知子
唇として使ふ真昼のあやめかな 攝津幸彦
屈みゐし人のつと立つ渓蓀かな 太田うさぎ