<はじめに> → 「句集ホロスコープ」【#1】
【今月の1冊/今月の1句】


君目覚めるまで冬林檎煮てをりぬ
『符籙』橋本直
2020年6月28日 東京都・正午
太陽/蟹座、月/天秤座、水星/蟹座、金星/双子座、火星/牡羊座、木星/山羊座、土星/水瓶座、天王星/牡牛座、海王星/魚座、冥王星/山羊座
最初に気がついたことは、『符籙』のホロスコープは右半分に星が偏っているということです。ホロスコープは360度の円を12の部屋に分けたものです。さらにそれを上下左右(東西南北)の4つのエリアとして読むこともできます。上半分の南は社会、下半分の北はプライベート。左半分は東で自分自身を、右半分の西は人や社会との相互関係を表します。
『符籙』は10個中、9個の星が右半分のエリアに偏っていて左半分のエリアにあるのは月だけです。この配置からは自己完結よりも、外界との関わりの中で世界を立ち上げてゆくこの句集のあり方が読み取れます。
星と星の角度を見てゆくと、山羊座と水瓶座の境目の場所で木星、土星、冥王星の3つが重なっています。木星と冥王星のコンジャンクション(0度)は、約12年に一度起こるアスペクト(角度)です。権力、頂点、審判を司る冥王星と成長と拡大を意味する木星の重なりは社会の中で確かな位置を得る配置です。また、冥王星を潜在意識と捉えると埋もれたものの中から豊かさを得るとも考えられそうです。そうであれば、過去の様々なものを採掘し、磨き上げ、新しいものへと昇華させる役割がこの句集にはありそうです。
木星と土星のコンジャンクション(0度)は、グレートコンジャンクションと呼ばれ、20年に一度のタイミングで重なります。こちらも到達を表すアスペクト(角度)です。ただし、こちらは忍耐力による成功を意味します。『符籙』は12年周期と20年周期という大きな節目が重なった年に生まれました。この2つのコンジャンクション(0度)は、どちらも時代の変わり目を示唆します。
君目覚めるまで冬林檎煮てをりぬ
毒林檎を食べて眠ってしまった白雪姫は王子様のキスで目覚めます。そんなミラクルは、12年と20年に一度の出来事が同時に訪れるくらいの奇跡です。この句の人がそれほど長く寝ているわけではないでしょう。けれど、目覚めた時に美味しく冬林檎が煮上がっていたら、それは幸せなことです。
(岸田祐子)
【執筆者プロフィール】
岸田祐子(きしだ・ゆうこ)
「ホトトギス」同人。第20回日本伝統俳句協会新人賞受賞。
初代木曜レギュラー!(2020年10月〜2023年6月連載)
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