倉田有希の「写真と俳句チャレンジ」

倉田有希の「写真と俳句チャレンジ」【第6回】


【第6回】

デジタルカメラかスマートフォンか


写俳の話題が続いたので、カメラに詳しくない人向けの話をしてみます。

屋外でデジタルカメラで撮ってる人が少なくなりました。大抵はスマホですね。かつては毎年のように新型が発売され沢山売れていたデジタルカメラも、いまは世界出荷台数が十数年前のピーク時の1/10以下です。その理由はスマホです。

デジタルカメラの画質は基本的に、

・レンズ・イメージセンサー・画像処理エンジン(センサー情報を画像に変換する電子回路 )

この3つで決まります。これが同じカメラなら写真も同じということ。あとはオートフォーカスの正確さや手ブレ補正等の機能面も大事です。このうちイメージセンサーは以前のフィルムに相当するもので、カメラの内部に収まっています。

このイメージセンサーが多くのスマホでは、1/2.3インチ というサイズで、これは以前の標準的なコンパクトデジタルカメラ(以下、コンデジ)と同じです。 1/2.3インチと言ってもピンと来ないかも知れません。これは縦横が4.6✕6.2mmなのでほんと小さい。一円玉が直径20mm。その小さなセンサーでよくあんな写真を撮れるものです。大雑把な捉え方になりますが 1/2.3インチセンサーのコンデジとスマホは同等の画質のイメージです。

そして手軽なスマホ撮影が主流になるにつれ、このクラスのカメラは多くが販売不振になり、ラインナップも減りました。デジタルカメラから撤退してしまったメーカーもあります。

その一方でスマホと競合しにくいコンデジが人気です。 1/2.3センサーながら光学倍率の高いコンデジと、画質面が有利である大きな 1型センサーのコンデジです。そもそもズーム撮影はスマホの苦手分野です。デジタルズームなので画質の劣化が激しい。たとえば外で猫を見かけてスマホで撮ろうとしたとき、近寄ると猫は逃げてしまいます。光学10倍以上のカメラなら離れたところから猫を大きく撮れます。動物園でもライオンやゴリラの顔もアップで撮れます。

ポケットサイズのコンデジでも光学30倍や40倍のモデルがありますし、大型のものなら光学60倍、80倍といったカメラも存在します。このクラスはズーム撮影が異次元の感覚です。

あとは1型センサーといってスマホの1/2.3インチより大きなセンサーのものが人気です。これは光学3倍から4倍のものが多く、スマホより綺麗に撮れますが、 5万円から10万円くらいとなかなかの値段です。今後、スマホの撮影性能はさらに上がっていくと思います。具体的には大きめの1/1.7インチセンサーや1型センサー、レンズを複数にして望遠機能を高める等。

良い写真は、

・被写体と、撮影のアイデア
・シャッターチャンス
・構図と、光の使い方

これを踏まえてどう撮るかだと思います。難しく考えなくても、沢山沢山撮っているうちに、だんだんとその人なりの作風というか、写真が固まっていくようです。

高級な一眼カメラで撮った詰まらない写真よりは、コンデジやスマホの面白い写真のほうが人の心に残ります。一眼カメラで良い写真を撮れるならそれに越したことはありません。しかし大きなカメラは持ち出すのが結構大変です。日常的に撮るならコンデジのようなポケットサイズは大きなメリットとなります。グループの写真とコトノハ展では、一眼でもコンデジでもスマホの写真でもOKでやってきました。いろいろ展示もやってきましたが、A4くらいの写真ならセンサーの小さなコンデジやスマホでも不自然な印象はありませんでした。つまるところ、人それぞれで、自分が使いたいカメラやスマホが一番と思います。

次回はレンズ交換式カメラの話です。

本日のまとめ、

○昨今のスマートフォンは便利で綺麗に撮れます。
 AI画像処理、望遠性能や高画質化など、スマホのカメラ機能はさらに進化していきます。

○コンパクトデジタルカメラは、スマホが苦手なズーム機能が高いものと、
 スマホより画質の良い1型センサーのモデルがあります。
 そういったカメラは撮影の幅と楽しみが広がります。

○日常や外出の際に、写真も撮りたいならやはりスマホは便利。
 写真を撮ること自体が好きなら、カメラが面白いと個人的には思います。


【執筆者プロフィール】
倉田有希(くらた・ゆうき)
1963年、東京生れ。「里俳句会」を経て現在は「鏡」に所属。
「写真とコトノハ展」代表。 ブログ「風と光の散歩道、有希編


【倉田有希の「写真と俳句チャレンジ」バックナンバー】

>>第5回 写真と俳句、呼称の乱立
>>第4回 写真と俳句の流れと書籍
>>第3回 写俳亭、伊丹三樹彦
>>第2回 石田波郷と写真と俳句
>>第1回 写真と俳句



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